「襤褸」という字、読める方いますか?
ぼくは知りませんでした(きっぱり!)。
「つづれ」と読みます。
そう、ツヅレタケの「つづれ」。
破れた部分をつなぎ合わせた服、つぎはぎの服、
転じて、ボロの着物、という意味だそうです。
今回の写真をご覧いただけば、一目瞭然。
傘にブラブラとぶら下がった内皮膜の名残りを、
命名者は「つづれ」に見立てたわけですね。
もっといいイメージはなかったのかなあ、
と思いつつも、
直接的に「ボロタケ」などと名付けられたら、
それはそれでさらに悲惨な名前になるところでした。
まあ、よしとしますか……。
地面や倒木からにょきにょき生えている、
我々が通常「きのこ」と呼んでいるものは、
胞子をつくって、さらに放出するための
きのこのひとつの器官のことで、
正確には「子実体(しじつたい)」と言います。
傘の裏側にあるヒダは、
胞子をつくり、かつ、放出する大切なパーツ。
傘が成長して胞子を放出できる状態になるまで、
膜がしっかり覆って守っているんです。
膜は傘が成長して広がるにつれてびりびりと破れ、
胞子が放出できる状態へと移行します。
ツヅレタケは、その、破れた膜の名残りが、
傘の縁でぶらぶらしているわけです。
ツヅレタケが見られるのは、
8月の終わりから9月の終わりくらい。
アカエゾマツやトドマツなど針葉樹の、
朽ちた木やその周辺の地面から発生します。
阿寒湖周辺では普通に見られるきのこですが、
全国的にはやや稀なきのこだということです。
(かわいい幼菌の姿はこちらをご覧あれ)
傘の直径は大きなもので15cmほど。
表面は灰色がかった茶褐色で粘性があります。
高さは4〜20cmくらい。
柄は白〜淡黄色で綿のような鱗片に覆われています。
傘にぶら下がっている内皮膜の名残りは、
柄の上部にツバとして残ることもしばしばです。
肉は白くて緻密でしっかりしていて、
食べたらいい食感を味わえそうに思えますが、
あまり容姿がよくない見た目の印象通り、
食不適、でございます。
ボロの着物とかいう名前が付いていたりしますが、
人間にはボロに見えようがゴミに見えようが、
自然界では、何一つ無駄になるものはありませんし、
役目を終えたあともしっかりと再利用されます。
と、考えると、地球上の生物のうちで、
人間だけが、ゴミをつくりゴミを捨てている、
ということになるのではないかと……。
う〜む……。 |