正解、食毒不明です。
タルゼッタ カティヌス
食毒不明
写真と文章/新井文彦

このきのこの名前を見たとき、
おそらく、ほんとんどの人は、
はあ……?
と思ったことでしょう。

「タルゼッタ」も「カティヌス」も、
一般人の日常生活にはまったく登場しない言葉。
意味不明ですよね、きっと。

ぼくも、阿寒の森で、このきのこを見つけたとき、
いろいろ図鑑にあたって調べてみたら、
名前が「タルゼッタ カティヌス」と出ていて、
和名がついてないのかよ!
と、ちょっとびっくりした記憶があります。

ちなみに、きのこなど菌類や植物の学名は、
「国際藻類・菌類・植物命名規約」に基づき、
ラテン語起源の属名と種小名の組み合わせで種名をつくり、
さらに学名を正式に発表した人の名前を加えて、
ひとつの名前とみなすそうです。

そう、このきのこの名前は、
ラテン語系の学名そのままなんですね。

タルゼッタ カティヌス!

数種類の図鑑に載っているくらいだから、
それほど珍しいきのこでもないはずなのに、
なんで?どうして?和名がついてないの?
わかりません(きっぱり)!

和名をつける場合は、
特別なルールなどは決まってないらしいです。
まあ、別に、タルゼッタ カティヌスでもいいけど……。

ご覧いただけばわかるように、
タルゼッタ カティヌスは、チャワンタケの仲間です。
(「カティヌス」もラテン語でボウルという意味)
見た目そのまんまですよね。

夏から秋にかけて、ブナやミズナラなど、
広葉樹の林地で発生します。
直径は1〜4cm、お椀の深さは0.5〜1cmくらい。
肉はけっこう固く、淡いクリーム色〜淡黄土色。
外側はビロード状で白い細かい毛が生えています。
そして、縁はぎざぎざです。

そうそう、けっこう多くの場合、
お茶碗の底が抜けちゃっているか、
もしくは2つくらい穴が空いているんですよ。
欠陥品?

タルゼッタ カティヌス!

子嚢(しのう)菌のチャワンタケの仲間は、
お茶碗の内側で胞子をつくるんです。
ですから、胞子を飛ばすだけじゃなく真下にも落とし、
次の世代をおんなじ場所にも発生させたい、
というような理由があるのかもしれません。
きのこに聞かないと本当のところはわかりませんが。

名前(和名)もついてないくらいなので、
食毒は不明とされております。
おいしくなさそうです。

タルゼッタ カティヌス!

きのこの名前をつけることは、
ただ単に個体の分類をするだけじゃなく、
提案者の見解を表明することなのだ、
と知り合いの菌学者が申しておりました。
ちょっとかっちょいいな!と思いました。

ところで、読者の皆さん。
今日登場したきのこの名前を言えますか?
もう忘れちゃったでしょ(笑)?

タル……。
失礼いたしました。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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