ロクショウグサレキン
食不適
写真と文章/新井文彦

いきなり、唐突ですけど、
キレイ事じゃなく、お金がいちばん大切!
という方は、少なくないと思います。
確かに、今のこの世の中、
お金無しに生きていくのは不可能ですし、
物事の価値の換算もお金が基本になりますし、
否定する余地はありません。

ただし、お金では買えないものや、
お金に換算できない価値があるものも存在します。
心とか、愛とか、形になりづらいもの、
あるいは目に見えないものがふと思い浮かびます。

そして、ありとあらゆる自然のものは、
とても貴重なのではないかと思うわけです。
だって、現在考えうる最高の科学技術をもってしても、
人間は単細胞生物1匹つくることができません。
その辺に生えている木の葉っぱ1枚にしても、
人間がそれを0からつくろうとしたら、
天文学的なお金をかけてもまだ不可能なんです。

葉っぱ1枚は、1万円で買えるかもしれませんが、
葉っぱ1枚をつくるには、1万円じゃ足りません。
なんか、そんなことを考えていると、
自分の価値観の根底がこんがらがっちゃいます……。

で、まあ、何でそんなことを考えちゃうかというと、
森で、ロクショウグサレキンを見つけたから(笑)。
どうです、この、きのことも思えないような美しさ。
まさに、森の宝石、森のアート。

以前、ロクショウグサレキンをご紹介したとき、
熱狂的とも言えるファンです、と書いたのですが、
その想いは、今も、まったく変わってません。
ああ、ロクショウグサレキン……。

別に、珍しいきのこではなく、
そこらに落ちている腐った木のかけらを見て、
地に鮮やかな青色が確認できる場合は、
ロクショウグサレキンの菌糸がある証拠です。

ロクショウグサレキンの子実体は、
だいたい、6月から10月くらいにかけて発生。
直径2〜6mmほどの円盤型で、柄があります。
ほとんど耳かきの先っぽくらいの大きさですが、
その神秘的なまでに青い色はすごく目立ちます。

柄が円盤の中心からずれているものは、
おそらく、ロクショウグサレキンモドキです。

その昔、緑青は毒だと言われていて、
それが名前の由来になっているロクショウグサレキンも、
もしかしたら毒のイメージがあるかもしれませんが、
毒きのこではありません。
小さいし、量だって集められないし、
食べるにはまったく値しないかと存じます。

それにしても、宝石などではなく、
森に生えているきのこを見て、
心震えるような幸せな気持ちになれるとしたら、
価値観のコストパフォーマンスとしては、
とても優れているのではないかと思います。
自然は、プライスレス。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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