正解、食べられます!
ノウタケ食
写真と文章/新井文彦

きのこ粘菌写真家、と名乗っているので、
秋になれば、きのこ採り放題でしょでしょ!
などと、思われがちですが、
実際のところは、それほどきのこに詳しくないうえ、
(シロウトの方に比べればもちろんマシですけど)
そもそも、森のきのこはあまり持ち帰りません。
別に嫌いなわけではなく、なんとなく、ですが。

あまり持ち帰りません、と言うのは、
もちろん、観察や撮影のついでに、
きのこを持ち帰ることもある、という意味で、
ヤマドリタケことポルチーニ茸や、
マツタケや、ホンシメジを見つけた場合には、
大喜びで、迷わず持ち帰ります、はい(笑)。

6月から10月いっぱい阿寒で撮影をして、
11月くらいに関東地方へ戻ってくると、
ものすごく楽しみなのが、自然薯掘り!
晩秋、というか、初冬の訪れを機に、
武蔵野の面影を感じる雑木林へ出かけるんです。
その喜びや、楽しみは、こちらをご覧あれ……。

最近、「きのこの話」の読者の皆さんも、
ぼくのきのこ写真に慣れてきたようで、
阿寒で撮影した写真と、東北や関東で撮影した写真が、
なんとなく区別できる、という声をよく聞きます。

そして、勘のいい方はもうお気づきですね。
そう、今回のこの写真は関東地方で撮影しました。
自然薯掘りのついでに(笑)。

雲ひとつない青空の下、
冬枯れの雑木林のササの間に、
ノウタケを見つけました。

夏から秋にかけて、林地や草むらや路傍に発生。
卵形の頭部に太い柄がついたような形状で、
高さは10cmほどになります。

幼菌のときは、白っぽくて、
まるでパンのようなふわふわの手触り。
熟すると黄褐色になり、かつ、
「脳茸」の名のごとくシワを伴ない、
さらには、悪臭を伴う液体を出し、
やがて乾燥すると表皮が破れてなくなり、
粉々の胞子がむき出しになります。

食、としましたが、食べられるのは、
ぱかっと割ってみて中身が真っ白な幼菌時のみ。
クセがなく、汁物や鍋物によく合うそうです。

じゃあ、この写真のように、成熟したノウタケに、
利用価値はないかというと……。

きのこなど隠花植物写真の大家にして、
我が心と写真の師匠「糞土師」こと伊沢正名さんは、
「人は地球から搾取しているのに何も返してない」
「排泄物を通じて自然と交わる」
という理由から、40年以上も野ぐそを続けています。

通常、お尻は、ペットボトルの水と、
選びぬかれた葉っぱを使って綺麗にするそうですが、
記念すべき「ハレ」の日用に温存してあるのが、
乾燥させたノウタケなんです。
超一級の拭き心地とか!

ぼくも、伊沢さんに触らせてもらいましたが、
まるでスポンジのような極上の質感でした。
確かに、気持ちよさそう……。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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