食毒不明。疑わしきは食せず。
ヤマブキハツ
食毒不明
写真と文章/新井文彦

夏の盛りの阿寒の森では、
生き血をすすりにくるヌカカやヤブカやアブが、
あるいは露出した皮膚の汗をなめにくるハエやらが、
ぶんぶんぷんぷん終始つきまとってくるので、
ゆっくりのんびりするヒマはありません。

そんな状態ではまともに写真が撮れないから、
ぼくは、たとえ、気温が30度に迫るような場合でも、
上下レインウェアを着て、手袋をして、長靴をはいて、
頭からすっぽり防虫ネットをかぶって、
完全な防虫対策で臨むので、北国阿寒といえども、
暑くて、暑くて、もう……。

きのこを見つけたら、
パシャ、パシャ、と写真を撮影して、
なんとなく手応えを感じたらすぐに移動。
また撮影してすぐに移動、の繰り返し。

1時間もしないうちに、もう、汗だらだら。
ぼくは虫に好かれ、かつ、虫刺されに弱い体質なので、
虫に刺されるより汗をかくほうを選ぶわけです、はい。

だって、ここは、阿寒湖。
昼でも夜でも24時間いつでも温泉に入れるわけです!
汗をかいたあとの温泉、最高でございます。
ただし、夏に、湯船に長くつかるのは禁物。
いつまでも汗が止まらなくなっちゃいますから。

そして、森へ行きさえすれば、
必ず何らかのきのこと出会えるのが、
阿寒の森の奥深さというかすごいところ。
ほら、あそこ、コケの間から顔を出す、
かわいらしい黄色いきのこが呼んでいます。

ヤマブキハツ、と言います。
山吹色というよりは、鮮やかなレモン色。
以前ご紹介したウコンハツは、傘も柄も黄色ですが、
ヤマブキハツは、傘が黄色で、柄は白。
どちらも甲乙つけがたく、かわいくて美しいですな。

ヤマブキハツは、夏から秋にかけて、
針葉樹、広葉樹、関係なしに、森の地面から発生。
やや冷涼な気候を好むきのこなので、
本州では山岳地帯でお目にかかれることが多いようです。

傘の直径は4〜10cmくらい、最初はまんじゅう形で、
やがて、平らに開きます(中央がやや凹む)。
縁の色はやや薄く、湿時に粘性があります。
高さは4〜7cmくらい。
傘裏のヒダと、柄は白〜クリーム色です。

ヨーロッパで生える近縁種は食用らしいのですが、
日本で見られるものはまだまだ食毒不明。
食用とはみなさない方が良さそうです。

ヤマブキハツを撮影して事務所に戻ったあと、
それほどヤブをかき分けたわけではないのに、
脇の下がなにやら、もぞもぞ、もぞもぞ。
マダニを発見……(涙)。

読者の皆さまにおかれましては、
森へ入る時の防虫対策はもちろん、
森から戻ったあとのマダニチェックも、
重要であることをお伝えしておきます。
どうぞご留意のほどを。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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