ベニカノアシタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

考えてみたら、もう10年くらいにわたって、
北海道東部の阿寒湖を中心にしたエリアで、
毎年、毎日、きのこや粘菌の写真を撮影してますが、
まったく飽きることがありません。

例えば、毎日同じ場所へ通っていたとしても、
じっくり見れば見るほど、いろいろな発見があります。
例えば、靴1足分の面積のエリアを観察するとしても、
1日も経てば劇的に変化していることに気づきます。

足下に目をやればミクロの森が、
空に目をやればマクロな宇宙があり、
自分が何にいちばん興味を持っているかによって、
必然的に見えるものが違うわけです。

いつも言ってますが、
人間って、森にいても、街にいても、
思った以上に、何も見てないんです。
きのこが生えていればきのこが目に入りますし、
かわいいお姉さんが歩いていれば目で追っちゃいます。
でも、見ているのはそれだけ。
そのとき、足下には何があったか?
自分の左側には何があったか?
ほんの数分前のことでも思い出せないんですよね。

ですから、逆に、何でも見てやろうと思って、
森へ出かけたら、新しい発見ばかりで困るほどです。
太いトドマツの幹にだって、
コケや地衣類がたくさん生えているし、
いろいろな虫が行き交っているいるし、
幹の上に森があると言っても過言ではありません。

でもまあ、ぼくの場合は、最終的には、
きのこと粘菌に注目してしまうわけなのですが……。
それほどきのこに興味があるわけでもない人が、
ぼくと一緒に阿寒の森をあるくと、
たいてい、びっくりします。

そう「きのこ目」の本領を発揮して、
あちこちできのこを見つけるから。

ほら、その先に、コケの間に、
小さな白いランの仲間、アリドオシランと、
ベニカノアシタケが並んで生えている!

それにしてもかわいいきのこですよね。
形と大きさがほとんど一緒でカラーリングが異なる、
(もちろん実際にはたくさんの違いがあります!)
コウバイタケオウバイタケベニカノアシタケは、
観察するのも、撮影するのも、本当に楽しいです。

ベニカノアシタケは初夏から秋にかけて、
主に針葉樹林の、落葉や落枝や倒木から発生します。
高さは2〜3cm、傘の直径は大きいもので1cm弱、
ひっそりと生えているようなとても小さなきのこです。
傘は美しく均等のとれた円錐形からやがて平らに開き、
表面は赤珊瑚色からオレンジ色〜黄色に。
周縁部は色が薄く白っぽく見えます。

柄は透き通るように透明感があるオレンジ色〜黄色。
下の方をよく見ると白く細かい毛があります。

もちろん、食不適。
食べるにはあまりにも小さすぎるし、
量を確保することも困難でしょう。
もし、見つけたら、心ゆくまで観察すべし!

ところで。
今回ご紹介した写真に写っているコケが、
どんな形をしているか、覚えていますか?

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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