ツノマタタケ
食不適
写真と文章/新井文彦

きのこに興味を持つようになって、
きのこのことをちょっと調べてみると、
いろいろな場所から発生することがわかります。

きのこは植物と違って光合成をしませんから、
生きていくには外部から栄養を得る必要があります。
そう、何かを「食べる」わけです。
きのこ=木の子という意味なので、
木に関係しているということは想像に難くありません。

「きのこの話」の中でも、何回も言ってますが、
きのこの本体は、糸のような菌糸です。
木(生木も枯木も含む)から発生するきのこの場合は、
その菌糸が、木の内部でじりじりと広がり、
表面から出した酵素で材を分解して吸収します。
(カビの場合もまったく同じです)
つまり、木を「食べて」いるわけです。

そして、時期がきたら、木の外側に、
いわゆる「きのこ(子実体)」をつくって、
子孫たる胞子を散布するというわけ。

きのこにもいろいろ好みがあり、
針葉樹が好きなきのこ、広葉樹が好きなきのこ、
そして両方とも好きなきのこもたくさんいます。
また、生きた木、枯れて間もない木、あるいは、
腐食してぐずぐずになった木を好むきのこも。

自然の中であれば、どんな種の、どんな状態でも、
それが木であるなら、いつか必ず、
きのこをはじめとする菌類が発生することでしょう。
お気に入りの倒木を見つけたら、
定点観測をしてみると面白いかもしれません。

紅葉もそろそろ終わりという頃、
阿寒川の上流部で温泉が湧き出している場所へ。
行く手を塞ぐ倒木を乗り越えようとしたそのとき、
黄色っぽいきのこを見つけました。
ツノマタタケです。

ツノマタタケは、夏から秋にかけて、
主に広葉樹の枯れ枝や倒木の上に群生します。
野外にある古い木製の階段やベンチなどで、
発生しているのもしばしば見かけます。

高さは1〜2cmで、黄色〜橙黄色。
ヘラや扇のような形をした薄っぺらな頭部の下に、
細い柄が伸びている形状をしています。

キクラゲの仲間でよく見られるように、
触るとこりこりとした軟骨のようです。

食不適。
毒は無いけど食べるには適しません。
見た目にもまったくおいしそうではありませんよね。
見つけたら、手でなでるようにして、
こりこりした触感をお楽しみくださいな(笑)。

ちなみに、
きのこの本体は菌糸、と言ってますが、
われわれが通常「きのこ」と呼んでいる、
胞子をつくったり散布したりする子実体も、
当然ことながら、きのこの一部なので、
菌糸でできています。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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