小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百伍拾・・・審判


「ふう~、蒸しますねえ」
夕刻というのに、気温は35度を超えている。
「この様子では、股間のヒヨコさんも、
 蒸し鶏になってしまうことでございましょう。
 風を通さねば危険です」
弟子の北小岩くんが、ふにゃふにゃになりながら
ひとりごちている。
ズボンとパンツを同時におろし、扇風機の風を当てると。
チンつぼを刺激されたのか、
怪しい気分が鎌首をもたげてきた。
「先生からお中元のお返しにいただいた、
 特上のエロ本があったはずです!」
わたくしの宝物と書かれた木箱から
ブツを取り出した不肖の弟子は、
左手にスケベ本、右手にムスコという体勢を
整えてしまった。
「うむっ!」
集中力を高めたその時だった。
「ハンド!!」
窓から室内をのぞきこんでいる男が、
こちらを指差している。
北小岩くんは、驚きのあまり
イチモツを捻挫しそうになった。
男は赤シャツに黒短パンを履いた異国人である。


北小岩 「なっ、何か御用でございますか。
 あなた様は
 ワールドカップ決勝戦の主審と
 お見受けいたしましたが」
主審
(なぜか日本語で)
「ボクに似た人、笛ふき~ました。
 が、別人あります。
 まだまだ日本は
 サッカー濃度薄いありますね。
 日常生活から意識かえないと、
 強豪国と戦えませんです」
北小岩 「なるほど。
 それで生活全般をサッカーととらえ、
 反則しないように
 チェックされているわけですね」
主審 「そうどえす。
 密かにエッチ事する場合でも、
 むやみに手を使ってはな~りません。
 足と頭使ってください。
 手を使っていいのはキーパーだけです」
威厳ある態度で語るのだか、内容はない。
何でも、日本中に2千人の主審と4千人の線審、
また第4審判も多数放たれたらしい。
「オフサイドやと?」
奥の部屋から、先生の間抜けな声が轟いてきた。
北小岩くんが駆けつけると、線審が旗を上げていた。
線審 「裏DVDを観る時に
 オフサイドポジションに入りました。
 裏DVDは法律で禁止されているはずです。
 それでも観ようという人は、
 モニターと鑑賞者の間に
 一人ディフェンダーを
 おかなければなりません」
小林 「そっ、そうなんでっか。
 それは知りませ、
 あっ、あいたたたた」
その間も流れ続けていた裏DVDは、
えげつないにもほどがあるものであった。
バツの悪さをごまかすため、
先生は突然お腹を押さえた。
いつの間にか
そばに立っていた主審の目が光る。
ポケットからイエローカードを取り出すと、
先生の眼前に突きつけた。
主審 「そうはイカの金玉!
 明らかにシミュレーションで~す。
 もう一度イエローカードが出たら
 退場ですよ!!」
小林 「かしこまりました」

状況を露ほども理解できていない小林先生。
主審の迫力に気おされ、
素直にうなずいた。
日本がこれから真の強さを身につけるためには、
いついかなる時でも
サッカーの試合中であるという気構えで
行動しなければならないであろう。
あなたの町にも、審判はすでに潜伏している。
風雲急を告げる。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2006-07-26-WED

BACK
戻る