KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の九百六拾伍・・・うちわ

「男たちは全員集合したか!」

「おう!」

輪の中心で場を引き締めているのは、
町一番の益荒男・
珍棒太(ちんぼうふとし)だった。

珍棒太 「負けるわけには
 いかねえからな!」
町の男衆 「おう!」
北小岩 「太さん、
 いつにもまして青筋を立て、
 太く気合いが入っておりますね」
小林 「下手をすると
 町の存続にかかわるからな」
珍棒太 「それじゃあ開けるぞ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

町の男衆 「うお~~~~~!」

御旅所と呼ばれる場所から出てきたのは、
見たこともないほど巨大な
和式便器を模したうちわだった。

珍棒太 「持ち上げるぞ!」
町の男衆 「おう!」

ぐぐぐぐ

北小岩 「重たいでございます」
珍棒太 「落とすなよ!
 河原まで大移動だ!!」
町の男衆 「わっせわっせわっせわっせ」

先生の町と隣町の境に、
流れが極端にゆるい川がある。
10年に1度、川の向こうとこちらでうちわで
扇ぎあい、死闘を繰り広げる行事がある。
負けた町は
立ち直れないほどのダメージをおうのだ。

河原にスタンバイした両軍。
川の真ん中には巨大なうんこのような
造形物が浮かんでいる。

審判 「位置について。
 よ~い、
 ブリブリ~~~!!」
珍棒太 「いけ~~~!」
町の男衆 「そ~れ! そ~れ!」

ぶんぶん びゅびゅっ

男衆が渾身の力をこめて扇ぐと、
うんこは相手岸に近づいた。

「負けるな!」

ぶんぶん びゅびゅっ

今度は先生サイドにうんこが流されてくる。

町の男衆 「そ~れ! そ~れ! そ~れ!」

ぶんぶん びゅびゅっ

一進一退を繰り返し三時間が経過した。

北小岩 「腕がもげそうでございます!」
小林 「俺もや!」

先生の町の男すべてが
ふにゃちん状態になっていた。

「今だ!」

ぶんぶんぶんぶんぶん
びゅっびゅっびゅっびゅっ

隣町の猛攻が始まった。

ど~ん!

町の男衆 「しまった!
 こちらの岸に着いてしまった!!」
審判 「うんこ一本!」

審判がわけのわからないことをのたまい
スイッチを押すと。

ぐにょっ~~~~~~~~~~!
ぽん!!

うんこから不穏な音がして、
上部の栓が飛んだ。

ぶりぶりぶり もわもわもわ~~~

珍棒太 「やべえ! 逃げろ!!」
町の男衆 「くっ、
 臭ええええええええええ!!!」

うんこから通常のうんこの一千万倍という
恐ろしい臭さの煙が出て
あっという間に町を覆ってしまった。

1年間その臭気が消えることはない。
これほど恐ろしい戦いが他にあるであろうか。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2023-04-02-SUN

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