Kuma
クマちゃんからの便り

糸井へ

久しぶりだ。釣りの具合はどうかい。
オレは昨日アフリカから生還したとろだ。
ニジェールのテネレ砂漠にてゲージツだった。
今世紀最後のバカバカしいほどの
激しいゲージツだったわい。
そういいながらも来年はもっと
素晴らしい激しさを ゲージツに
持ち込むつもりなんだけどナ。
アフリカまでが遠いのだが、
ニアメから1000kmちかい陸路を
ジープで砂漠の入口の町
Agadez。
ここで中古の発電機や溶接機
そして鉄材2トンを積み込み、
13、4時間かけて砂の海を往き、
テネレ砂漠のど真ん中に辿り着いてゲージツだ。
山梨FACTORYで創ったガラス100Kgも
無事持ち込んだ。

しかし、昼間は47.8℃になり、
オリオン座が東の空に現れてくる夜は
4.5℃に落ち込む砂漠では、
文明の利器も一たまりもなくクラッシュして、
単なる重たいだけの鉄のカタマリと化したものだ。
それでもAgadezに取替えに行ったり修理したりで、
文明をなだめすかしては何とかゲージツ続行。
終わろうとしている20世紀も、
古代から続く過酷な自然のまえでは赤子同然だった。
砂漠を岩塩を駱駝に積んで行き来するキャラバン。
今も古代のままである。
井戸のあるその場所は、キャラバンの交差点だし、
休息場所でもあるんだ。

<風の樹>と名づけたオブジェが完成した日、
テネレは砂の嵐になった。
激しくもイイ旅だったわい。
<風の樹>はこれからも風に反応して音を出し、
光りを溜めこみ続けるだろう。
そして砂漠のジカンにいつか埋まっていくのだろう。
これから高知の海にいってイシダイ釣りに行く。
糸井も風邪なぞひかずに達者で、年の暮をすごせよ。

1998-12-17-THU

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