Kuma
クマちゃんからの便り

北極レポート・・・11
ビーバー・NON・NON

昨夜は不完全なオーロラ現象に不満のまま眠ったが、
今日は朝から一変して雪である。

グラント親爺の狩小屋は
白樺の森を一時間ほど車で入ったところだ。
ここで寝起きしてパンを焼き、罠を仕掛けて狩をしたり、
家を修理して過ごしているのだが、
そんな生活も10月から5月までしか
宿泊しての狩は許されてない。
ネイテヴ・インデアンより狩の規制は厳しいが、
先祖代々毛皮を獲っては、白人に売っている彼の祖先は
デンマークから来た、
ドラゴンと同じにいろんな人種の血が混じった
<マイティ>で ある。
自分の子供達はこの生活を好まないが、
自分はこの森で終わりたいと思っている、64歳。



猛吹雪になっていた。
ここから更に奥へ30km入った
ビーバー・ダムに仕掛けを3個掛けて置いたから
見に行こうと言う。
閉ざされていた仕掛けの周りの氷を
チェーンソウで切り抜き、
二メートル程の枝の先に着けたノミで氷を砕き、
仕掛けを上げたが無し。
2個目はオレが氷を砕き、
凍りつく柄を握り最後の一撃を加えた。
掌を物凄いスピードが滑りぬけていった。
「イカン!」叫んだが後の祭りで、
沼色の水に吸い込まれて行った。
「悪いね。大切な道具が沼に行ってしまったよ」
オレは振り返って謝ると
「大丈夫、心配するな。
 春になったらビーバーが拾い上げてくるサ」
グラント親爺はニコニコ言う。
おコトバに甘えてちょっと安心した。
「もし、ビーバーが金の道具を持って来たら、
 『それはワタシのと違います』って言 うコトだな。
 間違っても『それは俺が無くしたヤツだ』なぞと
 言ってはイケナイ。
 『ワタシのは錆びた鉄で出来たヤツです』
 と正直に言うとイイな。
 ビーバーに姿を変えた水の精がお見通しだからよぉ」
無くしたのはオレだというコトすら、もう忘れて言った。
「分った、そうするよ。
 でもKUMAの正体は、
 俺にビーバー獲りをさせない為に、
 わざと俺の道具を無くした
 <グリーンピース>の人間じゃないだろうネ」
彼はちょっとマジな顔で言う。
「オレはチャーハンに意味も無く入ってる豆さえ
 一個残らず取ってから喰うんだ。
 ツマラン豆の癖に
 <自分がなけりゃ美味しい筈がないわ>と
 言わんばかりの卑しい姿が気に食わないんだ」
彼は大笑いした。

結局ビーバーは一匹の収穫も無かった。
狩小屋に戻って、手製のパンに温かい紅茶をヨバレタ。
窓の外は何も見えないほどの猛吹雪。
今日もオーロラは絶望的だ。
アメリカの悪口を言い合っては大笑いした。
森の小屋ではエロ話か国の悪口が面白い。
そしてホテルに帰った夕方5時、
信じられないほど空が真っ青になった。
風で雲が飛んだのだ。気温は零下20℃。
オーロラが現れる確信が昨日より強く感じ た。
その上、ジャパンのオーロラ観察団108人
全員帰国したようだ。
今晩は、昨日パイクを釣った湖に出掛けて
オーロラを独り占めしてやる。
オーロラの光りがどんな音をオレの頭蓋に
響かせてくれるのだろう。  

2001-03-25-SUN

KUMA
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