北極レポート・・・14 オペラ終演
もう昨日のオーロラ・オペラでオレは充分だった。
郵便局に行って、
山梨FACTORYでの作業用にと今朝、
防寒服は郵送してしまった。
今日は空白の一日。結石の痛みを楽しみながら、
ただボンヤリと過ごしていた。
オーロラ・オペラ開演時間の夕方になって、
オレの頭蓋に『もう一度観ていくがイイ』と
小さな金属的な響き始まっていた。
オレの腎臓はここ一番のシーンで
結石が騒ぎ始める癖がある。
モンゴルでも、フィンランドでも、サハラでも痛んだ。
オーロラのパワーを浴びた結石が
3日前からついに痛み出していたのだ。
ベッドで倒れていようと思ったが、
強くなった金属音が結石の痛みを超えていたから、
観光客用の防寒着と靴を
ホテルのカウンターで手配してもらった。
白人ガイドの倅の瀟洒な家は、
ホテルから一時間ほど行った山の中腹にあった。
珍しく商売気の白人ガイドは始終喋りつづけ
バカ笑いが煩いのだが、ロケーションは最高だった。
ポプラ、シラカバの向こうは小さな町だった。
光りの邪魔にはならない。
オペラは始まっていた。風が落ち着いているせいか、
昨日より強い緑の光がゆっくりたなびいた。
今回現れたオーロラ・オペラ。
初日の弱い光りの序章から、
昨日のオレが吹雪のオーロラに<嘘鈴>で参加した本編。
昨日で満足してウッカリするところだった。
オーロラの音が知らせてくれた今日は最終章である。
オーロラはジカンなのだ。
印画紙に写し取ったところで、
それは一分足らずの瞬間でしかない。
ガイドの倅の3頭のバカ犬の吼える声が煩いから、
オレは自分手袋に吐いたツバを舐めさせて、
「BE QUIET!」
顔を激しく撫でて犬どもを大人しくさせた。
全天空がオーロラに覆われていた。
オレは静かな金属音を眼で感じ、右耳で強い光りを観ていた。
もうコトバは要らなかった。
そして静かに鎮まっていった。
オレのオーロラ・オペラの終演である。
明け方部屋に戻り、素裸になって
ネイテヴ・インデアンの長老に貰った
貴重な乾燥キノコを削り灰皿で火を点けた。
教わったとおり、煙を掌にとって
結石の背中に何度も擦り付けてから眠る。
今回の浮遊で確実にパワー・アップしたオレが、
創りつづける極東の光りKUMA'S BLUEを
来年ヴェネチアまで運ぶ、後ろ盾の無い旅が始まるのだ。
5月になったら、下見の浮遊に出掛ける。
P・S 写真はガイドが撮って呉れた写真の中から、
オレのメモリーに近いモノをデジカメで複写した。
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