VENEZIA、光りへの浮遊
HELLO! I am KUMA!
生まれてすぐにジフテリアにかかったオレは、
ボンヤリとしたヒトとしてこの世に生還して、
来る日も来る日も空を眺めてボンヤリしたコドモだった。
「空が青いのはどうしてか」
と婆さんにしつこく質問したことなぞも、
いつの間にか忘れちまったまま大人になっていた。
絵を描いたり、鉄を叩いたりするうちに、
鉄を溶かすようになり、
物質を解かす熱量を手に入れるとやがて、
硝子を解かしはじめ五年が過ぎた。
<KUMASBLUE>という
五〇〇kgから一トンのガラスを鋳込み、
青いヒカリのカタマリを削ったり
研磨したりしているのである。
最初の疑問だった
「間抜けなくらい空の青い色」
にいつの間にか惹かれていたのだ。
オレのシゴトは工芸ではない。
光りの彫刻なのだが、
今まで八トンちかいヒカリを創ってきた。
来年三月、ヴェネチアに六トンのヒカリを運び込んで
個展を企てている。
何の後ろ盾もないままの決行である。
そのための打合せや視察にイタリアに向かう。
リスキーで愚直なこのコト自体が、
オレの<ゲージツ>というものだ。
なんとか成功させるべく愛用の尺八で
<嘘鈴>を吹いては気を高め、
間近に迫った出 発を待っている。
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