Kuma
クマちゃんからの便り

ヴェネチアへ


HELLO! I am KUMA!

ヴェネチアから厳重に梱包されたガラスが届いた。

先日のイタリア浮浪の折のことだった。
今月末からヴェネチア・ミラノで始まる
若いマエスロ達のグループ展に
急きょゲスト出品してみないかという話になって、
ムラーノ島・TSUCHYのFACTORYで
ベテランのマエストロと創ったオレのガラスである。
伝統的な手法で吹きあがったモノは10kgほどある。
<コップ>というテーマらしかったのだが、
オレはそんなこと聞いてなかった。
聞いたのかもしれないが覚えていない。
「コップにしては大きいなぁ」
というコトになったが、
「コップは液体を入れて飲む 道具だ。
 ジャパンでは、メデタイ酒は
 大きなサカズキという器で飲む。
 特に相撲レスラーが優勝した時はナ」
「これは一番目立ってしまう」
「仕方ないサ、大きい小さいは、
 生きるヒトが勝手に感じる事だ。
 掌サイズがコップだと誰が決めたのか、オレは知らない。
 これはオレの解釈なんだから。
 しかも、これで完成ではなくて
 山梨FACTORYで自分の方法で削り出すのだ」
と言い残して帰ってきた。
徐冷を済ませたヒカリのカタマリを
TSUCHYが送ってきたのだ。
TSUCHYはじめマエストロ達に感謝。



ヴェネチア浮遊のジカンがまた頭蓋に甦った。
来年、イタリアでの<極東からのヒカリ>展のことや、
ヴェネチアで交わしたマエストロ達とのトークバトル。
イタリアの気配はオレに何か力を加えたらしい。
一〇〇〇年の伝統的な手法で創ったガラスを、
極東の梅雨空の下で、
オレの手で感じ取る摩擦係数で
ヒカリを削り出し研磨仕上げするのだ。
吹き竿一本で重力とやりとりしながら仕上げてしまう
職人的な工芸の方法ではなく、
オレがいつもやっているカタマリを全面的に削り出す
手間の掛かる古代人的でさえあるやり方で、
<今>の美しいヒカリを創りだすのだ。
曇天の光で、日がなガラスを見詰め
手順をイメージしたり写経で過ごした。
早く仕上げて、ヴェネチアに送り返さなければならない。
来年<極東からのヒカリ>展では、
この杯でマエストロ達とグラッパでも回し呑んで
酔っ払いたいものだわい。

KILNも順調にピークを迎え、
二メートル立米の熱量空間の温度差は一桁代である。
いよいよ急冷のタイミングを計りながら今日から削り出す。
KILNからの生還は七月末の予定。
ヒカリのゲージツも佳境の入口だ。

2001-06-12-TUE

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