Kuma
クマちゃんからの便り

南洋通信 その6 今度はBALIだ

時差が一時間でも、南半球へ片道六時間のマレーシア。
八月二日二十三時、クアラルンプール発
今朝六時三〇分成田着。
アズサにて上諏訪。
原田泰治の美術館三周年の為に対談だった。
三月からの約束だし、
なによりも美術学校の同級生だったからなぁ。

三年間で四十五万人の入場者、大したものだ。
<ふるさと>のほのぼのとした景色を描き続け、
素朴派というイメージを持たれ、
それに癒されているファン達の<期待>とやらを
裏切るわけにもいかないと言った
<ハラダ>のコトバがなぜか気になる。

オレはこの頃、人生は若いとき思ったほど長くはないと思う。
若い時の自分をコピーし続けるのではなく
昨日まで創ったモノすら惜しげもなく壊して、
新しいモノを創らなけりゃ、
この世に来た意味もないと思う。
オレは焦ってもいないけど、
すでに終わることすら時間割にはいっているのさ。
オレは自分を壊しながら、行けるところまで行ってみるよ。
今さら、人生論なぞを語ってるヒマはお互いないけど、
達者でナ。
終わって車にて東京戻り、午前一時。
夜が明けて六時三〇分には成田に向かう。
タッチアンドゴー。
今度はバリ島である。
マレーシア、クアラルンプールからだと
距離的には直ぐのバリ島も、
とんでもなく寄り道したものだ。
三日午後八時にデンパサール空港。



ここで番組宣伝だが、NHK−BS2、
九月十二、十三日の似や連続ゴールデンの午後七時放送開始。
一時間半のON AIRだ。
テーマは<亜細亜の建築>だったと思うが、
正確には知らない。
オレは建築のレポートとゲージツの荒事を御見せする。
これも来年ミラノでの個展
<極東からのヒカリ>展への序曲だ。
しかし、バリ島ではどんな出来事が待ち受けているのやら。
二〇年前、まだ鉄と出会う前悶々とした日々、
オレは南洋で絵を描いて一生を過ごそうと、
ナケナシノ銭でバリ島に来て、
暑さに参って三日で帰ったことがある。
空港から一時間、暗闇はあのときのままだった。
明日は王宮に泊まることになってるらしい。
オレはバリのどこかに植物の建物を創ることになっている。
山梨に戻れば、地獄の釜が開くというお盆だ。
地獄より凄いオレのサイバーKILNの蓋も開いて、
五月に鋳込んだ一トンのKUMABLUE、
いよいよ生還である。




『蔓草のコクピット』
(つるくさのこくぴっと)
篠原勝之著
文芸春秋刊
定価 本体1619円+税
ISBN4-16-320130-0
クマさんの書き下ろし小説集です。
表題作「蔓草のコクピット」ほか
「セントー的ヨクジョー絵画」
「トタンの又三郎」など8編収録。
カバー絵は、クマさん画の
状況劇場ポスターの原画「唐十郎版・風の又三郎」です。

2001-08-08-WED

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