MUDIMA開催決定!!!!!
ミラノのギャラリー・MUDIMAのキューレーターの
ドミニクとフランス文化庁の クリスチャン等と
ワインを呑みながら、IZUMIさん手料理で夕食会。
オレがすでに送っていた<作品集>や
<ヴィデオ>はみんなの手に渡っていて、
おおむねオレのエネルギーや、
ゲージツを読み取ってくれているようだった。
ゲージツに対して感じたことや、
オレがオレの可能性に気付いていない部分を
ワイワイと英語、フランス語で飛び交う。
IZUMIさんがオレの通訳係りだ。
それにしても酒場でも
久しくこんなテーマを語り合う相手もいなかったし、
ジャパンで
今までこんなにコミニケーションしてくれたことは
なかったわい。
デパートの催事場での
販売促進エキシヴィジョンぐらいだったナァ。
ワインの酔いがイイ。
真っ暗なCOMO湖から打寄せる水音を聴きながら
ホテルまで歩いて戻る。
帰り際にクリスチャンが貸してくれた
SPOERRIの<作品集>を眺めながら眠っ た。
頭蓋に熱を感じていたのは、
カーテンの隙間から
COMO湖が照り返すヒカリを浴びていたからだった。
開き直りにちかいクリアな気分の朝。
いよいよ<MUDIMAギャラリー>のボスに
会いに行くのだ。
彼が決定する。
入念に剃髪して、いつもより頭皮の感覚を敏感にする。
いつも変らぬ笑顔で
「大丈夫よ、クリスチャンもドミニクも
わたし達みんなKUMA さんを応援してるから」
と言ってくれるIZUMIさん。
ドミニクを乗せた車でオレのホテルに迎えにきてくれた。
「今日でチェックアウトした方が節約になるよ」。
ミラノのド真中、
有数のコンテンポラリー・ギャラリー<MUDIMA>。
一階から三階まで使えるという。
イイぞ、こんな場所でエキシヴィジョンできたら
イイなあ。
オレは頭蓋の空間に自分のオブジェを配置していた。
Gio Di Maggioが現れた。
静かな男だった。
彼にもすでにクリスチャンから渡った
オレの作品集を見てくれていたのだ。
「オレの作品はやたらと重いんだ。床や壁は大丈夫かい」
「壁は石だし、300kgから800kgある
Cesarの作品もクレーンで吊って
窓から入れてフォークリフトで設置したんだ。
生前最後の作品展だったんだよ。
SpoerriやArman、
そうだ今井のも終わったばかりだ」
「コンテンポラリーの巨匠達ばかりじゃないか」
「アンタは自由だ。
考えて創るのはアンタだ。
全てアンタから始まるんだ、
俺達はそれに対して意見を言ったり
注文はさせてもらうさ。
来年早々、ドミニクとアンタのFACTORYを訪ねて
作品の最終手続きするよ」
「待ってる」
彼はfondathon<基金>の
プレジデントでもあって、
オレの個展に<基金>から協力してくれるという
プレゼントつきだ。
「10月はミラノのベスト・シーズンだ。
お前のエキシビジョンはその時にやろう。
そしてこの空間でインスパイアされた、
お前らしい新作も創ってくれよ」
「約束する」
握手した。
シシリー出身の顔がやさしく微笑んだ。
<ANTEPRIMA>のコレクションが
終わったばかりのIZUMIさんも
「何だかふたつの仕事が片付いたようでホッとしたわ」
喜んでくれた。
寿司屋で乾杯した。
『オレがここまで来るのに
六〇年掛かったちゅうワケだ』
ショーチューが染み渡る。
でもこれはやっと入口で、
<MUDIMA>に作品を持ち込むのは
来年一〇月なんだ。
まだ先は長いぞ。
それでも、ジワジワと嬉しさがこみ上げてきた。
『蔓草のコクピット』
(つるくさのこくぴっと)
篠原勝之著
文芸春秋刊
定価 本体1619円+税
ISBN4-16-320130-0
クマさんの書き下ろし小説集です。
表題作「蔓草のコクピット」ほか
「セントー的ヨクジョー絵画」
「トタンの又三郎」など8編収録。
カバー絵は、クマさん画の
状況劇場ポスターの原画「唐十郎版・風の又三郎」です。
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