Kuma
クマちゃんからの便り

陶壁完成

HELLO! I am KUMA!

浅草始発、東武浅草線。
二時間近く田園というか、
色づいた柿の実が目立つ田舎の景色の中を行く終点が
<赤城駅>。
赤城駅から車で一〇分ほどで
<大間々町>の町立図書館の建築現場だ。
陶板の壁に取り付け作業はもう終っていて、
今日は引渡しである。
この儀式が終わらないとオレにゼニが入らないから、
大切なのだ。
コンパネを敷いて大きくした作業台に並べた
二メートル×四メートルの土にアクッションしたワケだが、
脚立に上がったところで全体を見下ろすことは出来なかった。
マ、全体のスペースは
オレの頭蓋内にインプットしてあるから、
アクッションのスピードには支障はなかった。
乾燥させた土を<登り窯>に窯詰めして、
KUMABLUEと土の融合具合を確認しながら
三日間薪をくべた。
窯から出したピースを見たのだが、
力ワザと速度で創ったこんなデカイ陶壁の全体を
再現して眺めたのは、今日が始めてだった。
「OK! 問題なし!」
三ヶ月掛かったこのシゴトは今日でお仕舞だ。
「この壁面は児童たちも掌で見るようにもなっているが
 手垢で黒ずんでも構わない、
 拭けばまた元通りになるんだ。
 みんな達者でやってくれ」
陶壁の前で演説して、<引渡し>の儀式は無事終了した。
オープンは来年の四月らしいが、立ち会った町長はじめ
<町の建設委員会>の面々も満足そうだった。
冷たい赤城おろしの空っ風が吹きはじめていた。
駅前で買ったアツアツの今川焼きを喰いながら、
次に創る自分の大きなオブジェを思案しながら東京に戻る。



オレが方眼紙に時間を掛けて書いていた
三次曲面の骨組みの型紙を、
<水と風のオブジェ>の為のスケッチを
キャドでアッサリ作ってくれたE嬢。
彼女は土木の為に生まれてきたような体躯。
これは新しい助っ人だわい。
鉄工場に入ってすぐに製作開始だ。ゼニがまた消えていく。



『蔓草のコクピット』
(つるくさのこくぴっと)
篠原勝之著
文芸春秋刊
定価 本体1619円+税
ISBN4-16-320130-0
クマさんの書き下ろし小説集です。
表題作「蔓草のコクピット」ほか
「セントー的ヨクジョー絵画」
「トタンの又三郎」など8編収録。
カバー絵は、クマさん画の
状況劇場ポスターの原画「唐十郎版・風の又三郎」です。

2001-11-06-TUE

KUMA
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