Kuma
クマちゃんからの便り

MILANOへの道程

MILANOへはヒカリだけではなく、
鉄をゲージツしていた四、五年前、
溶解炉で溶かした鉄を
砂型に鋳込んだモノも持ち込むのである。
どれも一トン以上はある。
原宿のクエスト・ホールで一回展示したが
何の反応も無かったなぁ。
FACTORYの片隅で埃を積らせていた鉄のオブジェ群を、
クレーンで引張りだして研磨し直した。
このところのヒカリ研磨で身に着いていた
摩擦係数を感じ取る掌は、
あの頃とは完全に違って今の方が敏感だし、
集中力も楽に持続するようになっている。
鉄はヒカリと違って水は使わないから朝八時にはジゴト開始。
今日は春のような陽気で研磨もはかどった。
何時の間にかFACTORYの中まで霧が浸入していた。
小火と間違うほどの霧である。
これ以上続けていると、錆びを剥がされた金属面に
たちまち錆びが湧いてしまうから終了にした。

しばらくFACTORY内のオブジェ群を眺めていた。
新しいアイデアが続々。
鉄のジダイのオブジェは、ゲージツする今のオレの頭蓋には
イイ素材になっていたのだった。
明日からまた新しい構成に向かう。



『蔓草のコクピット』
(つるくさのこくぴっと)
篠原勝之著
文芸春秋刊
定価 本体1619円+税
ISBN4-16-320130-0
クマさんの書き下ろし小説集です。
表題作「蔓草のコクピット」ほか
「セントー的ヨクジョー絵画」
「トタンの又三郎」など8編収録。
カバー絵は、クマさん画の
状況劇場ポスターの原画「唐十郎版・風の又三郎」です。

2002-01-20-SUN

KUMA
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