Kuma
クマちゃんからの便り

美しい事件


寒い山梨FACTORYで
MILANOへのOBJEを仕上げ着々と進む。
テレビ・クルーが来て撮影。



東京経由して福岡。北九州小倉へ。
何処へ行ってもクソ寒いジャパンだ。
北九州の悪天候で着陸できず、日本海上空をウロウロ、
一時間遅れで着陸。
いよいよ<井筒屋・黒崎店>の巨大壁面の制作だ。
TOTO本社、林博士が迎えに出てくれた。
制作に全面協力していただく。
構内の大きな部屋は
すでに透明ビニールを張り巡らしてあった。
ここの床に一メートル×一メートルの陶板を四〇枚、
一〇メートル×四メートル、三トンの巨大壁面を
原寸大に敷き詰めて制作するのである。
思う存分に釉薬をぶちまけ、
三〇〇〇個のKUMABLUEのヒカリを入れる
土の器を作陶しても安心だ。
洗面台や大小の便器を衛生陶器というらしいのだが、
使っている土は陶芸などで使う土のように柔らかくない。
釉薬や土に関してのベテラン親方の元に
若い職人が立働いている。
世界のTOTOのオートメーション化された
工場のラインの中に漂い、
硝子についてもプロの林博士とここの精密な職工たちを、
束の間のジカンをオレのゲージツに巻き込むのである。
土を焼きKUMABLUEを溶かし二度焼きして、
有機的な青いに充ちたヒカリの王国を創り出す
美しい事件なのだ。

博士や親方たちと入念な打合せして準備完了。

<花と竜>の小倉の夜。
博士と巷に漂い割烹に上がる。
何と、あのイモショーチューの銘酒<森伊蔵>を呑む。
あてはゴマサバだ。
海を泳いでいるゴマサバという種類ではなく、
新鮮な関サバを炒りゴマと味噌に和えたモノである。
博士と物質や熱量のNANOの世界を語りあう。
寒い雨が降る夜に酔いに漂う。これの組合せはイイ。
タイトルは<BLUE NANO CITY>にした。

一旦、戻ってすぐにリターン。
激しいゲージツにゴマサバとイモショーチューだ。



『蔓草のコクピット』
(つるくさのこくぴっと)
篠原勝之著
文芸春秋刊
定価 本体1619円+税
ISBN4-16-320130-0
クマさんの書き下ろし小説集です。
表題作「蔓草のコクピット」ほか
「セントー的ヨクジョー絵画」
「トタンの又三郎」など8編収録。
カバー絵は、クマさん画の
状況劇場ポスターの原画「唐十郎版・風の又三郎」です。

2002-01-23-WED

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