大壁面
今年の桜前線は例年より早いとテレビでは大騒ぎだ。
山梨の<神代桜>の満開も今週で終わると
タクシーの運転手が言った。
準備もままな らなくて頭を抱えているのは、
花見産業の人々で、早い遅いは自然の都合だ。
TOTOのKILNから五十枚の陶板が無事出てきて、
いよいよ<井筒屋>のエントランスの三階吹き抜けの
大壁面に垂直に張り込まれていく花曇りの小倉に来た。
今日まで四十 枚張り終えたが、あと十枚は明日以降。
完成まで足場は取れないしまだ
目隠しも掛けられたままで全体は見えない。
今年の正月明け早々に乗り込んで水平に並べて
アクション制作したモノを水平にしたまま
TOTOのKILNで焼いたから、
垂直になったモノを観るのは今回初めてである。
オレは足場に登って、
大きな制作室を提供してくれただけでなく、
乱暴に近いアクションで創った
ヒカリのOBJEに面食らいながらも
焼き上げてくれたTOTOの林博士や、
いつも完璧な製品を作っている職工等の
勇気と技術に感謝しながら一枚づつ掌で観ていた。
![](IMAGES/020328-PICT07.jpg)
ネオジュウムと陶板はイイ緊張を保ったまま
オレ狙い通りに、
一枚が全てだし全体が 一個のハーモニーを放っていた。
小倉でアクションしたヒカリを、小倉の窯で焼き、
小倉の場所でヒカリを放つ。イイ流れではないか。
GINOが来日した時オレに
「シシリーには古代方式の窯場もある。
お前もやってみる か」
と言っていたコトバを思いだした。
モンゴルの草原も、サハラ砂漠も、
インドのダラムサラも、降り立った場所を
FACTORYにしてきたオレだ。
小倉の次はシシリー島になればイイ。
![](IMAGES/020328-PICT17.jpg)
『蔓草のコクピット』
(つるくさのこくぴっと)
篠原勝之著
文芸春秋刊
定価 本体1619円+税
ISBN4-16-320130-0
クマさんの書き下ろし小説集です。
表題作「蔓草のコクピット」ほか
「セントー的ヨクジョー絵画」
「トタンの又三郎」など8編収録。
カバー絵は、クマさん画の
状況劇場ポスターの原画「唐十郎版・風の又三郎」です。
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