FACTORYの省エネシフト
OMRONの今村氏をはじめ若いコンピュータ技術者たちと、
焼肉屋で会食。
肉をあまり喰わないオレは、上ミノと<真露>を呑む。
美味いなぁ。
束の間、美味いモノに出会った縁を噛みしめながらも、
<サイバー・KILNの省エネ>を語るヒトの燃費は
かさむコトであるが、有難く喰った。
分厚いミノの太い繊維のザクッという音が頭蓋に響いて、
漬け込んだ美味いタレが染み出した時、
知合いの年老いた猟師が飼っていた犬が、
部落のヒトを噛むようになり
それに気づいた老猟師は犬を殺して、
噛んだヒトの家一軒づつに詫びながら配って喰っちまったと、
猟師のセガレが話してくれた。
「俺も喰ったけど、アカ犬は美味かった」
と恥ずかしそうに小さく呟いたコトバを、
オレは密かに思い出していた。
オレはミノと真露でイイ気持ちになっていた。
イタリアでの個展へむけての
圧倒的なKUMABLUEのヒカリを
サポートしてくれたのは、
PCからでも遠隔操作できるコントローラの
サイバー・KILNだったし、
1000℃のKILN内で
硝子の実体温度を摂るセンサーなど、
オレのゲージツ・ショードーを
OMRONの今村氏等によるコンピュータ技術が
次々に現実にしたのだった。
MUDIMAへの搬出を済ませたら、
そびえるサイバー・KILNばかりが目立ち
荒涼としたFACTORY内に、
使わなくなって放置されている工芸硝子レベルの溶解窯が
目障り場所を占めている。
ヒカリを求めて独学の試行錯誤で作っては
何度も失敗を繰り返し、
オレを苦しめてきた<ゼニ喰い窯>だ。
オレはムカシ、ビルの解体鳶をやっていたことがあり、
深沢七郎親方のミソを作る煉瓦窯を解体したこともあるのだ。
ヨシッ! 解体だ!
フラット化するJ−アートとは別のベクトルの
オレのゲージツは、これを一区切りにして
もっと激しくなっていくゲージツの為に、
FACTORYをもっと使いやすく広くすることにした。
それにしても製品の生産性が無いFACTORYでの
電気の燃費は、やっぱし高くつくわい。
なんとかならんか、東京電力!!!
谷間の川に沿った<風の通り道>に建っているし、
南西に面した大きな壁面は短い日照を充分受け取っている
高さ11メートルあるオレのFACTORYは、
オレのシャレコウベでもある。
頭蓋内で発生したショードーを体中で遊ぶために、
風とヒカリを動力源にするのだ!
またOMRONの若い面々と企んで、
ナチュラルパワーのFACTORYへ
シフトを換えていくとするか。
ミラノへのOBJE群を搬出するための
ATAカルネ(一時輸入のための通関手帳)を
無事に受領した。
アンテプリマのIZUMIさんから、
オレの作品集を見たフランスの有名なコレクターから、
『KUMAOBJEの購入について問い合わせがあった』
とのFAX。
売れることより、極東から海路を往ったオレのゲージツが、
色々なバイブレーションを伝えられればもっと嬉しいのだが。
『蔓草のコクピット』
(つるくさのこくぴっと)
篠原勝之著
文芸春秋刊
定価 本体1619円+税
ISBN4-16-320130-0
クマさんの書き下ろし小説集です。
表題作「蔓草のコクピット」ほか
「セントー的ヨクジョー絵画」
「トタンの又三郎」など8編収録。
カバー絵は、クマさん画の
状況劇場ポスターの原画「唐十郎版・風の又三郎」です。
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