クマちゃんからの便り

全開


去年の秋から
ニューヨークのギャラリーからオファーがあったのだが、
初めてのNY個展はいよいよ六月開催と決まった。

9・11以来いっそう厳しくなった
アメリカの税関での入国審査は、
ヨーロッパより三倍ほど時間が掛かるという。
送られて来たギャラリーの見取り図を眺めては、
大きなヒカリのカタマリを削り、
鉄で大きなオブジェを創りはじめている。
星を見上げながらの立ち小便のため以外に
外に出ることもないままのゲージツ三昧の日々である。
四月上旬には梱包して積み出さなけりゃならないのだが、
また何かと厄介で愉しい日々がはじまった。

<山梨中央病院>の開院式は三月らしいのだが、
完了したライティング設備の点検に立ち会ってほしいと、
大成建設の所長・金チャンが直々に迎えにきた。
寒いなぁと思っていたが外は真っ白だ。
気分転換に<SWEET ENERGY>に
会いに行くのもイイものだ。



設置し終わった一月、
まだ大勢出入りしていた作業員たちは
次の作業現場に散っていったのか、
顔見知りはほとんど見あたらない。
床タイルも張り終わった広い空間の
やわらかいヒカリのなかに、
<SWEET ENERGY>が
想像どおりの存在感で在った。
開院すればもう有り得ない誰もいないこんな空間を、
暫し贅沢に独り占めして眺めていた。

ミラノ、ベネチア、
パリで発表してきたオレのゲージツは、
去年一年はこの<SWEET ENERGY>を
創るために石切場で過ごすジカンが多かった。
金チャンらと少ししみじみと居酒屋で芋ジョーチュー。
FACTORYに戻り、
ニューヨークで大騒ぎするためのオブジェ制作を続行。
まだ発表する予定のない版画も、
シャドウボクサーの日記のように
ひたすら創りつづけていくだろう。

そんな時、NYから六ページにわたって
オレの特集を組んだ
<SCULPTURE>が送られてきた。
このタイミングはオレにいっそうのチカラをくれた。



クマさんへの激励や感想などを、
メールの表題に「クマさんへ」と書いて
postman@1101.comに送ろう。

2005-02-20-SUN
KUMA
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