日本には72もの季節があるって、ご存じでした?春夏秋冬が「四季」。立春や夏至、秋分に大寒などが「二十四節気」。ここまでは日常的に使われるのですけれど、さらにこまかく分けたものを「七十二候」って言うんです。365÷72‥‥ということはつまり、季節ってだいたい5日にいちどめぐってくるんだ!そんなこまやかな日本の季節感を、いっしょに味わうコンテンツ。ナビゲーターは「あずま女に京おとこ」のコンビです。
一月一日更新 「くらしのこよみ」に英語版ができました。 Kurashi No Koyomi is now available in English.
京おとこ あけましておめでとうさんどす。
ごぶさたしとりました、「京おとこ」どすえ。
という、京都弁演技はこれくらいにして、
みなさま、地元に帰っての
お正月を満喫されていますでしょうか。
たぶんわたくしは実家の京都に帰省して、
今ごろ白味噌に頭芋、大根に金時人参に丸餅という、
慣れ親しんだお雑煮を体内に取り込んでいるはずです。
とはいえ、故郷のお雑煮保守派ではなく、
いつか香川で食されているという、
あんこ入りの餅のお雑煮に
チャレンジしてみたいという野望もあります。

さて、3年ほど前に七十二候にそって
季節の俳句や行事、旬の食べ物をお薦めするアプリ
「くらしのこよみ」を
ここほぼ日では対話形式で紹介しておりましたのですが、
実は、この「くらしのこよみ」を完全に英語化しまして、
昨年末「72 Seasons」として
iOS/Androidでリリースしました。

Download

iOS (iPad and iPhone versions)

72 Seasons for Android

Get it on Google Play
ここのところ日本語として
ニュースなどですっかり定着しました「インバウンド」。
わたくしも最初耳にした時には、
「野球でインコースにワンバウンドする新しい魔球か」
と思いましたよ。
いや、それは言い過ぎの作り話なのですが、
それぐらい違和感があったものです。
しかし、いまや嵐の桜井くんが
普通に言ってそうな言葉じゃないですか。
実際、みなさんの近くにも押し寄せていませんか、
外国人観光客たち!
わたくしは職場が東京の銀座に近いものですから、
時々昼間に歩いたりすると、
「うわ、この一角、日本人は自分だけか!」
という体験をしたりしています。

せっかく外国から人が来るのなら、
この機会に英語で日本のことを
説明できるようになりたいと、
英語の勉強をはじめている、はじめたいぞ、
という方々もいらっしゃるのではと思うのであります。
もちろん、日本が大好きだから、
日本のことを深く知りたいという世界のみなさんも
多々いらっしゃるのではとも思いました。
そこで、「72 Seasons」の開発と
相成ったわけでございます。

とくに「くらしのこよみ」で紹介している食の数々を
英語にするのは意義あることかと考えました。
ずいぶん前、
つまりインターネットが普及していなかった、
もちろんスマホは当然なかった時代に、
友達が欧米から来たお客さんとよく会食をすると言うので、
「“この食べ物は何?”みたいな質問で
 答えられなかったらどうすんの?」と聞いたら、
「あー、そういう時は
 “It's good for health”って言うとくんや。
 そうしたら食べよるで」
と友達(大阪人)が言うので、
びっくりしたことがありました。
一晩で何回も“It's good for health”と言うのか。
それだったら、最初に“Everything are good for health”と宣言したら楽ではないか。
ん、しかし、それは、自分が異国の
未開の島に行ったとして、
半裸の老若男女に取り囲まれた晩餐の宴で、
見慣れぬ豪勢な料理を眼の前に、
「全部身体にいいから全部食べてね」
と言われることと同じではないか。
たぶん、その時「今日は食欲は無いけど、
一緒に踊るから許して」とか言いそうだな。
だったら、日本の食材や料理をすらっと英語で言えたら、
それはかっこいいぞと思った記憶があるのです。

たとえば、今日の元旦は七十二候だと、
第六十六候「雪下出麦(ゆきわたりてむぎいずる)」
なのですが、旬のさかな「甘海老」は、
英語版「72 Seasons」だと「Sweet Shrimp」、
割とそのままですね。
他にも「白菜」は、
英語で「Chinese cabbage」だというような
新鮮な驚きがあります。
白菜よ、君は「中国キャベツ」だったのか。
ずっと昔から日本に住み着いているものだと
誤解していたよ。
わかってなくてすみません。
これも英語にしたから発見できることの一例であります。
今回、「くらしのこよみ」英語版「72 Seasons」
翻訳を統括してくれた、トム・ヴィンセントさんから
英語で推薦文をいただきました。
トムは、「ほぼ日」オールドファンには懐かしい、
T-1ワールドカップのチャンピオンでもあります。
72

Seasons. One year divided into not just four, nor even six, but a full seventy-two tiny, delicate seasons. 365 days in seventy-two brief snapshots, each lasting less than a week, capturing the subtle changes in the world around us throughout the year.

Japan's ancient 24- and 72-season calendars are said to have originated as a way to counter-balance the once standard lunar calendar, which although mathematically satisfying and simple, regularly shifts out of sync due to the earth's diagonal axis. In contrast, the seemingly ephemeral cycle of events that occur in nature throughout the year - the stag shedding his antlers, the ice thawing as spring approaches - are in fact surprisingly regular and on-time.

The ancient people of Japan watched, sensed and recorded these events, noticing how they repeat each year, and setting them down as a calendar which serves not only as a time-keeping device, but also as a poetic reminder of the natural world that buzzes and flows around us, and our fragile place within it. "Spring Winds Thaw the Ice", "The First Peach Blossoms", "Damp Earth Humid Heat", "The Maple and the Ivy Turn Yellow".

Available in English for the first time, the 72 Seasons app takes each of these seasons, and expands it with haiku poems, seasonal foods and events, all beautifully illustrated with photographs and old prints and drawings. The free version of the app updates automatically as the seasons change - every five days or so.

Seemingly so vague and imprecise, open the app in Japan and you will often be delighted to find the same species of bird that was recorded hundreds of years ago still singing in a tree near to where you stand today, the same flower blossoming in a nearby wood, the same pattern of clouds in the sky... In a different area of the world, perhaps the bird, the flower might be a different species, but if you watch carefully no doubt similar rhythms and patterns will become clear.

The Japanese are often quick to boast of their country's four beautiful seasons - Spring, Summer, Autumn, Winter - which can seem strange to those of us familiar with all the other areas in the world with the same annual cycle. Yes, the seasons in Japan are beautiful, but why such pride in Japan's seasons above those in other places? Yet seen against this older, more subtle 72-season calendar and the delicate perceptions and understanding of the natural cycle that it demonstrates, that sense of pride makes more sense. Perhaps it is not so much the seasons themselves, but rather the delicate sense of them that the ancient Japanese perfected and recorded in the calendar that is the source of that pride. An ancient sensibility that over time has eventually become ingrained as “common knowledge” for the modern generation.

Although humans all around the world have a natural ability to sense the natural rhythms around them, as our lives become more and more influenced by planet-wide standardised computers with their mathematically precise time-keeping, it can be difficult to find room for the fuzzy, uncomputable patterns of nature that messily blend into each other and repeat, year in year out. But in our rush for convenience and efficiency, are we not losing something very precious? Delivered through the very symbol of our contemporary age, your smartphone or tablet, the 72 seasons app is one way of helping to set the balance right again.

京おとこ 以下、「京おとこ」による和訳です。
あやしい翻訳ですから、
どなたか腕に自信のある方の訳をいただけたら、
すぐに差し替えます!

十二候。一年は、単に4つでも、6つでもなく、72の小さく、繊細な季節に分かれる。どれも1週間にも満たない、365日のうちの72の簡潔なスナップ写真が、一年を通じて私たちを取り巻く世界の微妙な変化を捉えるのである。

日本で古くから使われてきた、二十四節気、七十二候は、かつて標準だった太陰暦が、数学的には満足のいくシンプルなものであったけれど、地球の地軸の傾きのために定期的にズレを生んでしまうために、そのバランスを取る方法としてはじまったと言われている。対照的に、一年を通じて自然に起こる一見するとはかないサイクルがあり、雄鹿が角を落としたり、春の接近につれて溶け出す氷は、実際驚くべきほど規則正しく、時に正確だ。

古来の日本の人々は、これらのイベントを観察し、感受し、記録することで、毎年訪れることに気づき、時間管理をする手段としてだけでなく、私たちの周りでざわつき、流れ行く自然界や、そこで暮らすか弱き住処を詩的に思い起こさせるものとしてのカレンダーに落とし込んだ。「東風解氷(はるかぜこおりをとく)」「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」「楓蔦黄(もみぢつたきばむ)」

今回初めて英語となった「くらしのこよみ」アプリは、これらの七十二候それぞれを取り上げ、俳句や旬の食べ物、季節の行事を紹介し、すべてに写真や昔の印刷物や絵が美しく挿入されている。この無料のバージョンは、おそよ5日ごとに、七十二候の変化にあわせ自動的にアプリが更新される仕組みになっている。

ややもすると曖昧で不正確にも見えるが、日本でこのアプリを見てみると、何百年前と同じ時期に、今立っているすぐそばの木で同じ種の鳥がさえずっていたり、同じ花が近くの森で咲いていたり、同じ形をした雲が広がっていたりして、しばしば喜びを感じることになると思う。たとえ世界の別の国や地域にいるとしても、鳥や花の種類が変わっても、もし注意深く観察していれば、疑いなく同様のリズムやパターンを鮮明に気づくようになるだろう。

日本人はよく早計にこの国の春夏秋冬の美しい四季を自慢するが、同じような例年の自然サイクルで暮らす世界の他地域の人にしてみれば奇異に映ってしまう。たしかに、日本の四季は美しい。しかし他に世界の地域に比べ、プライドを持てるほどの四季なのだろうか。この古く、精妙な七十二候のカレンダーと、そのデリケートな知覚、この暦が示す自然のサイクルへの理解を知ったなら、プライドを持つ感覚は納得できる。おそらくそれは季節変化自体のことではなく、むしろ昔の日本人が暦の上に見事に記録をした季節を捉えるセンスにこそ、日本人のプライドの源はあるのではないか。時を超える古来の感性がついに現代人の「共通知」として、しっかり植えつけられたのだ。

世界中の人間は自分たちを取り巻く自然のリズムを感じ取る本性があるはずなのだが、私たちの生活はますます数学的に正確な時間管理を強いる地球規模の標準的なコンピューターに影響されるようになって、毎年毎年乱雑に重なったり繰り返したりする、曖昧で計算しがたい自然のパターンを許容する余地が無くなってきている。しかし、便利と効率に邁進して、尊いものを失ってはいないか?今日的にとても象徴的なスマートフォンやタブレット端末を通じて届けられる、「くらしのこよみ」の英語版である「72 seasons」は、私たちの生活のバランスを正しく元に戻す一助となる一つの方法である。

京おとこ 以上、「京おとこ」による直訳和訳でした。
ほんとは京都弁訳とかできたらよかったんですが。
こなれていない上にあやしい翻訳ですから、
どなたか腕に自信のある方の訳をいただけたら、
すぐに差し替えます!

「くらしのこよみ」「72 Seasons」
2つのアプリがスマホにあれば、
その相乗効果たるや、
日本にくわしくなれるわ、
英語の勉強にもなるわで、
ふた粒で2倍美味しいということですよ。
(こう書くとあまり有り難みが無いですね・・・)

なにはともあれ、
七十二候とともに暮らすみなさんの一年が
素敵になりますように。
2016-01-01-FRI
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