[岩田]
『はたらきたい。』というタイトルはとってもいいですね。



[糸井]
あ、本当? うれしいかも(笑)。

[岩田]
前にウェブで連載されていたときの
「ほぼ日の就職論。」も読んでましたけど、それをまとめた本のタイトルが『はたらきたい。』というのは、なんていうか、ちょっと、すごいなぁ。

[糸井]
この本をどうとらえるかっていうのをずっとぼくも考えていたんだけど、『はたらきたい。』っていうタイトルをつけたら、急に楽になったんですよ。
なんていうのかな、世の中の風潮としては、はたらくことって、「イヤなこと」みたいにとらえているでしょう?

[岩田]
ああ、そうですね。
生活のために自分の時間を犠牲にしてやむをえずはたらいて、そこで得た収入で、人生の楽しみを得る、というような。

[糸井]
そうそう。

[岩田]
もちろん、どんな人生もその人の選択だと思いますから、そういうはたらき方を否定したいわけじゃありません。
どんな人生もその人の選択だと思います。
でも、少なくとも、私にとってはそうじゃない。
仕事はたいへんなこともあるけど、同時にたのしいことでもある。

[糸井]
ぼくもそうですね。

[岩田]
私が糸井さんとお会いしてからもう15年以上経ちますけど、糸井さんは昔から本当におもしろそうに仕事をされてますよね。
当然、仕事ですから、たのしいことばかりじゃなくて、たいへんなこともありますけど‥‥。



[糸井]
具体的に、いっしょに苦しい仕事をしたこともありますよね(笑)。

[岩田]
ええ、ええ(笑)。
苦しいときは苦しいですし、息止めて潜って我慢する、みたいなこともありますからね。

[糸井]
イヤだなぁー、ってカレンダーを見ながら思うこともありますよね。
でも、学生のときの「イヤだなぁー」と違うのは、終わって、乗り越えてしまうと、越えた山がすごく低く見えるんですよね。

[岩田]
ああ、そうですね。

[糸井]
だから、手帳やカレンダーをパラパラめくると、
「あ、これも、あれも終わっちゃったんだ」
っていうようなことばっかりでね。

[岩田]
終わると、イヤだったことも、たいしたことなかったことになってしまう。
じゃあ、それを乗り越えるために努力しなかったかっていうと、努力してるんですけどね。

[糸井]
うん、うん(笑)。
そういう感じ、学生時代にはわからないのかもしれないね。

[岩田]
やっぱり、経験しないと実感できないのではないでしょうかね。

[糸井]
だから、これから社会に出る人は、イヤなことに出会うのは当たり前だ、くらいに思ってたほうがいいかもしれないね。

[岩田]
もっというと、イヤなことって、ほとんど毎日のようにあります。
仕事ですからね。

[糸井]
うん。会社に入ると、イヤなことの種類が変わるんですよね。
自分でジャッジして決めたイヤなことが多くなる。
それは、イヤなことだけど、おもしろいんですよね。

[岩田]
ええ。

[糸井]
『はたらきたい。』なんだ、それは本当に。

[岩田]
そうですね。
仕事は、考えようによってはおもしろくないことだらけなんですけど、おもしろさを見つけることのおもしろさに目覚めると、ほとんどなんでもおもしろいんですよ。
この分かれ道はとても大きいですよね。

[糸井]
つまり、仕事が楽しいという人も、楽しくないという人も、
「わぁ、つまんない!」
っていうところまでは同じなんですよね。

[岩田]
ええ。

[糸井]
で、あまりにも自分が得意なことというのは、これまたおもしろくないしね。

[岩田]
はい、はい(笑)。



[糸井]
だから、その意味では、
「ちょうどよくおもしろい」なんてそんなにないからね。

[岩田]
はい。ちょうどよくおもしろい仕事はないです。

[糸井]
ないです(笑)。

[岩田]
仕事はやっぱりたいへんだし、イヤなことはいっぱいありますよ。
きっと、我慢もしなきゃいけません。
ですけど、おそらく、その人にとって
「仕事がおもしろいかどうか」というのは、
「自分が何をたのしめるか」という枠の広さによってすごく左右されると思うんです。

[糸井]
そのとおりですね。

[岩田]
だから、そういうところまで含めて、『はたらきたい。』というのは、糸井さんの仕事観がすごく出ているタイトルだなと思いました。

[糸井]
ああ、うれしいなぁ。
みんな、『はたらきたい。』って思ってるんだって最近気づいたんですよ。
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