第10回 お菓子の場所にいる人。



[糸井]
ぼくは、お菓子そのものが概念として好きなんですよ。
お菓子というものが世の中にあるっていうこと自体が、ハーッと、気持ちいいんです。

[斎藤]
わかります。

[糸井]
お菓子は、ぼくらを甘えさせてくれるものなんです。
お砂糖が必要不可欠かどうかの話じゃなくて、お菓子は、みんなが好きなものなんです。

お菓子の話をするときは、みんながにこやかでしょう。
ぼくは、お菓子は花よりすごいと思うくらいなんです。
そこの仕事をしてるということ自体が、斎藤さんっていいなぁと思うんですよ。
この「社長に学べ」のシリーズではいろんな方と話してきましたが、次に誰に出ていただこう、と考えたときに
「そうだ、斎藤さんだ。
 あの人は、お菓子の場所にいる人だ」
と思いついたんです。



[斎藤]
はははは。

[糸井]
例えば「自転車部品ってすごいんだよ」という物語だとして、とてもいいお話を伺えたとしても、きっとこんなには広がらないと思うんです。
景気がもっと悪くなったり、争いが起こったとき、
「お菓子の話すること少なくなったね」
となったら、もうそれは終わりです。

[斎藤]
そうですね。悲しいです。

[糸井]
お菓子の話をできるぼくたち、ということの裾野を、もっとつくっていけたらな、と思うんです。

[斎藤]
本当に。

[糸井]
お話をうかがってて、何よりおもしろかったのは‥‥斎藤さん、悩んでないじゃないですか。

[斎藤] え?(笑)
いや、そんなことはないんですけど。

[糸井]
大局を語りすぎず、自分がやりたいこととやれることを順番にやってきたという感じがやっぱりしました。
これは今の時代に勇気がいるなと思うんです。
「世界はこうなるから」
と言いながら、一生懸命考えたってどうにもならないですよね。
「やっぱり、できることを順番に」
そういう社長が、本当は世の中にいっぱいいると思うんです。
それは会社員にも役に立つ。
こういうコンテンツをみんなに読んでほしいなと思う時期が来たんだなと思うんです。

[斎藤]
うーん‥‥。

[糸井]
チョコレートを割ったりモデムつけちゃって怒られたり(笑)、そういう社長が。

[斎藤]
うん、そうですね。

[糸井]
斎藤さん、これからどうなりたいですか?

[斎藤]
この会社がクオカという名前になってちょうど10年経つんですけど、クオカは、30年、50年、100年とお客さまのお菓子づくりをお手伝いしていく会社にしたいなと思っています。
ですから、会社としてはもっとしっかり組織をつくっていかなきゃいけないという、そういう段階に来ちゃったなと思っています。
ぼく自身は、昔のほうが絶対たのしいんですよ。
あの、寝ないでやってたときのほうが、たのしいんです。
だけど、社長としてやらなきゃいけないことに、自分の仕事をシフトしているところです。
それを喜びにしていくしかないと思ってます。




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