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[糸井]
シーズン中は、いつもブログを拝見してました。

[田口]
ああ、ありがとうございます(笑)。



[糸井]
あのブログは本当におもしろいですね。
プロ野球選手がシーズン中にブログを書くっていうことがまずありえないと思うのに、あの頻度で、あのクオリティーですから。

[田口]
いえいえ、もう、毎晩格闘してます。

[糸井]
試合とは、関係のない部分をしっかり読み物として読ませてくれるじゃないですか。
あのへんの距離感はすばらしいですよね。

[田口]
ああ、そうですか。
ありがとうございます。

[糸井]
もう、他人事みたいに書くこともありますよね。
よくもあんなに軽やかに自分から離れられるなぁって思うんですけど、ご自分では自覚なさってますか。

[田口]
どうでしょうね‥‥。
でも、いわれてみれば、ぼくは基本的に物事を客観的に見るタイプなので。

[糸井]
ああ、やっぱりなぁ。

[田口]
つねに自分を違う位置から見てるような部分があります。

[糸井]
そういうタイプの選手は、メジャーリーグという、競争社会の典型のような世界では損をしたりしないですか。

[田口]
う〜ん、どうですかね。



[糸井]
もう「オレがオレが」っていう選手ばっかりでしょう?

[田口]
そうですね。

[糸井]
たとえばピッチャーが打たれて、監督から交代を告げられる。
素人から見ても「交代だろ」って思うけど、マウンド上でピッチャーだけが
「冗談じゃない!」って怒ってたりしますよね。
あれは、客観的に見られていないわけでしょう?

[田口]
そうですね。
ただ、怒っていいときはあると思います。
ですから、ぼくも客観的でないときはあります。

[糸井]
あ、そうですか。

[田口]
うん。
怒っていいときっていうのは絶対ありますから。
ぼくもブチ切れるときはあるんで。

[糸井]
怒ったときはどうするんですか。

[田口]
そういうときは、監督室に行きますね。

[糸井]
あ、なるほど、なるほど。

[田口]
ただ、そこで大ゲンカするかというとそういうことはないですね‥‥いわれてみれば。

[糸井]
監督室に行ってる時点で客観的になってる気がしますね。

[田口]
そうかもしれません(笑)。
やっぱり、基本的には、田口という選手がどういう選手であってどういう使われ方をするのが正しいかというのをゲームを通して客観的に見ていますからだいたい、監督と意見は合っていくんですね。

[糸井]
ええ。ブログを拝見していると、どうやら、そうみたいですね。

[田口]
それで‥‥いま言われて気づきましたけど‥‥監督にとって、すごく、
「使いやすい選手」になってるんでしょうね。
ちょっと、なりすぎてるくらい。



[糸井]
あぁ、言っちゃった(笑)。

[田口]
いやいや(笑)、いま言われて、あ、そうか、そうかと。
だから、まぁ、はっきり言ってしまうと、なかなかレギュラーがとれなくて、
「4番目の外野手」ということで落ち着いてしまうのもそういうことなのかなぁと。

[糸井]
いや、それはそれで、ものすごいことだと思いますよ。
ワールドチャンピオンになったチームの4番目の外野手なんですから。

[田口]
いや、でもね、思い当たることがあって、オリックスにいたころ、仰木監督もそういうことを言ってたんですよ。
あの、ぼく、仰木さんに、打順をメチャクチャ変えられたんですよ。

[糸井]
たしか、守備位置も(笑)。

[田口]
守備位置も変えられたんです!
ぼく、レフトでゴールデングラブ賞、2年連続でとったんですよ。
それなのに、つぎの年に仰木さんから
「セカンド守れ」言われたんですよ。

[糸井]
はははははは、おかしい(笑)。

[田口]
で、そのずっとあと、もう選手と監督という関係じゃなくなってから、仰木さんのところへ行って、問い詰めたんです。
「監督、正直に言ってください」と。
「なんであんなことばっかりぼくにしたんですか。
 ぼくは、つらかったですよ」と。
そしたら、監督は真面目におっしゃいました。
「ひとことで言うたら‥‥ 使いやすかったんや」と。



[糸井]
ははははははは。

[田口]
「そ、それだけですか?」
「うん。だっておまえ、 なんにも言わんでやるし」って。

[糸井]
いや、でもね、仰木監督の気持ちもわかる(笑)。

[田口]
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