[糸井]
いやぁ、あれから1年経っちゃいましたね。
[田口]
経ちましたね。
[糸井]
この1年は、いろいろありましたね。
まぁ、簡単にいうと、フィリーズに移籍して、チームはワールドシリーズで勝ってチャンピオンになるという最高の成績をおさめたけれども、田口選手としては、
「とにかく出られない」という状態で。
[田口]
はい(笑)。
[糸井]
おそらく、不振なわけでもなく、マイナーに落ちるわけでもなく、ずっとベンチをあたためていたという。
[田口]
そうなんです。
で、今日は愚痴を聞いてほしいなと思って。
[糸井]
ああ、言ってください、ぜひ(笑)。
[田口]
ま、今年1年は、愚痴ばっかりでしたけど。
[糸井]
そうなんですか。
でも、表面的には、じっと我慢していたという感じですよね。
[田口]
そうですね、終盤は、とくに。
でも、オールスター前までは、監督室にガンガン行って、もう、ケンカ寸前まで行ってましたよ。
[糸井]
ポイントはやっぱり、監督ですか。
[田口]
そうです。
その話を今日はさせていただこうと思って。
[糸井]
マニエル監督ですよね。
日本にもいたことのある、あの「赤鬼」。
[田口]
そうです。
[糸井]
日本野球の経験もあるし、相性がいいんじゃないかと思ってたんですが。
[田口]
ええ、相性はよかったですよ。
おっしゃるように、日本の野球も知ってますし、
「日本の野球のスタイルというのはすばらしい」
ということを公言されている監督で。
[糸井]
そう見えましたよ。
[田口]
だから、まぁ、理解のある人だなと思って行ったんですけども、これがとにかく、ぜんっぜん、動かない監督で。
[糸井]
ほう。
[田口]
レギュラーをガーンと固定していく監督なんで、そういうところはちょっと、
「あ、考え方が違ったな」と。
[糸井]
「4人目の外野手」として控えてる田口さんからすると、つらいですね。
ただ、レギュラーとして出てる選手にとっては最高の監督かもしれませんね。
[田口]
そうですね、はい。
[糸井]
多少、調子がわるくなっても、
「レギュラーはおまえだって決めたんだから おまえを使うぞ」と言われるわけだから。
[田口]
そうですね。
[糸井]
「ま、タグチっていう 日本のいい選手も控えてるけど、 オレはレギュラーのおまえを使うぞ」と。
[田口]
ははははは。
[糸井]
出たい側からすると、きついですよねえ。
[田口]
きついです。
ですから、何度も監督室に行って、
「つかってくれ」って言うんですけど、まったく話にならなくて。
[糸井]
「言いたいことはわかるが我慢しろ」
みたいなことになるんですか。
[田口]
そうですね。
ぼくは、理屈で負けるとは思わないんです。
こう言われたら、こう返して、こういう理屈で、こう提案して、みたいなことを考えて行ってますから。
ところがね、話をしているうちに、怒り出すんですよ。
[糸井]
ははははは。
[田口]
こう、だんだんだんだん顔がグーッと赤くなっていく。
[糸井]
まさに、「赤鬼」。
[田口]
まさに、「赤鬼」ですよ。
で、これはアカンと。
怒らすのはまずいと。
[糸井]
逆効果だと。
[田口]
で、帰って来ちゃうわけです。
だから、なんていいますか、
「理詰めでは勝てない」。
[糸井]
ふだんは、そういう人じゃないんですよね?
[田口]
ふだんしゃべるにはすごくいい人なんです。
練習中とかに、野球以外のバカな話で盛り上がれる関係ですし。
すごく気もつかってくれるし、実際、仲もよかったんですけど、こと野球になると、まったくぼくとは違う野球哲学を持っている人なので‥‥。
[糸井]
最初に軽く確認しておきますけど、その赤鬼の野球は、自分とは違うけど、最終的には「アリだな」と認めることになったんですか?
[田口]
認められなかったんですけどね、最後、やっぱり、ワールドシリーズに勝って、証明されましたからね。
[糸井]
そうですね。
[田口]
ですから、最後の最後で優勝できたんで、
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