2006.10.09
僕にとって手帳というものが、カメラに近づいたなという気がしています。
『写真がもっと好きになる。』の連載でおなじみの
写真家の菅原一剛さんは、
「ほぼ日手帳」ユーザーのおひとりです。
もともとこの手帳は、
ご自身の生活には必要がないもの、
と思っていたという菅原さんですが、
いまでは、毎日、何かしら書き込むほどに
なってくださっているそうなんです。
今回は、菅原さんにとっての「ほぼ日手帳」について、
お話いただきました。
菅原一剛さん
2006年版から
「ほぼ日手帳」を使いはじめているのですが、
最初は、予定しか書いていませんでした。
僕は、ふだん物を書くということはほとんどしませんし、
スケジュールも、
大まかには、自分の手帳に書いていますが、
案件も多いので、自分で管理すると忘れてしまうので、
事務所に管理してもらっています。
そんなこともあり、「ほぼ日手帳」の存在は
以前から知っていたのですが、
僕には、必要ないものだと思っていました。
それが、昨年の12月半ばに、
北海道の富良野に住んでいる写真家の友だちのところに
遊びに行ったとき、そいつと一晩中、
「(グレン・)グールドは天才だよね。」
なんて言い合いながら、盛り上がっていたんです。
ちょうどそのときメモできるようなものが、
「ほぼ日手帳」しかなくて、
彼が教えてくれたことがあると、その都度、
「ちょっと待って、それメモしておくわ‥‥」
と手帳にメモしていたんです。
翌日、メモでいっぱいになった手帳を見ながら、
「あーあ、これじゃあ(手帳も)台無しだなあ」
なんて思っていたのですが、
ちょうどその頃の『今日のダーリン』に、
「スケジュールでいっぱいになっている手帳もいいけれど、
メモでいっぱいになる手帳があってもいいじゃない」
というようなことが書いてありました。
それはたしかにそうかもしれないな、と思って、
それ以来、すごく気持ちが楽になって、
いまでは、すっかり「雑記帳」になっています。
この手帳には、毎日、何かしら書いていますね。
その中でも、やっぱり写真に関することが一番多いかな。
たとえば、この日のページには、
レンズの絵が描いてあります。
ちょっと細かい話になってしまうのですが‥‥
これを解説しますと、
プロターというドイツのカール・ツァイス社のレンズで、
アンセル・アダムスやエドワード・ウェストンといった、
昔のカメラマンたちが使っていたレンズなんです。
ふつうは、レンズをしぼると、
写真の雰囲気が硬くなってしまうのですが、
このレンズは、しぼっても写真が硬くならないという
奇跡的なレンズで、このレンズが欲しいと思って、
イラストを描いたんです。
写真以外のことでは、たとえば2月15日のページには、
「わーいわーい」なんて書いています。
なにか、うれしいことがあったのでしょうね。
心に残った言葉を書き留めたり。
この日は、1月2日の「ダーリンコラム」の初夢の話から抜粋。
こんなふうな手帳の使い方をしたのは
生まれてはじめてです。
僕は、もともとメモ魔なので、
手帳と、もう1冊ノートを持っていて、
メモや雑記はノートに書くことが多かったのですが、
いまは、メモや雑記もすべて
「ほぼ日手帳」に書き込んでいますね。
あと、この手帳を使いはじめて、とくに変わったことは、
いままでの手帳だと、休みの日は真っ白で、
ほとんど何も書いていなかったのですが、
この手帳になってから、
土日の方がいっぱい書き込んでいることです。
休みの方が時間的な余裕があるから、
いろいろ気づいたことや思ったことなども
平日にくらべて多いのでしょうね。
「このパタンと広げられるってところが
またいいんですよね。
手でおさえなくても開くからすごく便利、
この製本は大好きです。」
メモ帳は、鞄の中に入れて持ち歩くことはあっても、
1冊だけ手に持って、出かけたりはあまりしませんよね。
でも、「ほぼ日手帳」は、これ1冊と財布だけ持って、
いつでも持ち歩いているんです。
これは、大きな違いだなあと思います。
菅原さんの「ほぼ日手帳」には、
この1冊のみを持ち歩いてもだいじょうぶなように、
手帳カバーの中には、名刺やカード類が入っています。
「ほぼ日手帳」を持ち歩く感覚は、
カメラを持ち歩く感覚に近いなと思います。
カメラを持ち歩いているときも、
別にいい写真を撮ってやろうとか、
そういうことはあまり考えていませんから。
僕が自分のサイトで連載している「今日の空」の写真も、
よく撮れたと思う写真以外も載せているんです。
展覧会で発表するような写真は
いい写真を厳選しますが、
その裏側には、いろいろな失敗があって、
その失敗があるから、
いい写真ができるということもあるじゃないですか。
よく「切り取る」ことが写真だと思われがちなのですが、
「物を見る」ということが写真なんだと
僕は思っています。
物を見て、「ああ、面白いなあ」と思っているときって、
カメラを持っていなくても、
すごく写真的な瞬間なんですよ。
だから、極端なことを言いますと、
写真というのは、カメラがなくても撮れるんです。
そういう意味で、「ほぼ日手帳」を使うようになって、
僕にとって手帳というものが、
カメラに近づいたなという気がしています。
この手帳に何かを書くときって、
「ああ、そうだよなあ」と気づいたことや、
「面白いなあ」と思ったことを書き込みますから、
その感覚が、写真を撮るときと似ているんですよね。
2006年版の黒革(右手)と
2007年版で使う予定のブルーブラック、
そして、ナイロンカバーは、カバー・オン・カバーで
ご自身の写真を入れて使ってみようかなと
おっしゃっていました!
菅原さん、どうもありがとうございました!
菅原さんのお話は、手帳以外の話題もとても面白くて、
取材に行った乗組員は、ついつい長居をしてしまいました。
最後に、「ほぼ日手帳」について、
「これからも作り続けてくださいよ。」
とうれしいことも言っていただきました!