【黄泉】
よみ・こうせん

[例文]
わたしは暗いトンネルをただひとりで歩いていた。トンネルは果てしなく長かった。いつまで歩くのだろう、と思い始めたとき、前方に小さな光が見えた。歩いていくと、それはだんだん大きくなった。どうやらトンネルの出口である。出口に近づくにつれて、水の音が聞こえてきた。トンネルを出ると、そこに川が流れていた。ははあ、これが三途の川だな、と思った。私は引き寄せられるように、足を水に浸した。それは氷のように冷たかったが、なぜか心地よくもあった。生ぬるい風が頬をなでていく。川の中ほどまで歩いたとき、向こう岸に派手に輝くものがあった。みるとどうやらそれはネオンサインである。ギラギラと輝く看板にはこう書いてあった。「いらっしゃいませ!よみの国へようこそ!」文字の下では水着の美人とマッチョな男がニカッと笑ってこちらを見ている。その横では真っ黒に日焼けしたエンマ大王がデッキに寝そべってトロピカルドリンクを飲んでいる。‥‥極めて悪趣味である。私はこんなものを目指して長い道をずっと歩いてきたのか!猛烈に憤慨した私は、きびすを返し、川の反対側へと向かった。まったく、バカげている。「‥‥さん、うさん、おとうさん!」「親父、オレだよ!わかるか、親父!」「先生、患者が意識を取り戻しました!」「うーん、信じられん。奇跡だ!」

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