MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

芸能界、演芸家連合部、奇術協会所属、
あの有名なマジシャン
(本人が言ってるんだから間違いないよ)
ナポレオンズのパルト小石がお贈りする
「ほら、アレよ、アレがいるわよ。」

インターネットに「有名人目撃情報」というのがあって、
「ナポレオンズ、パルト小石」も出てきます。
街を歩いていてもそれほど何か言われることもないし、
別に大して「有名」だと思ってはいないものの、
この目撃情報がかなり多いのには驚かせられます。
ただ、その内容はごくシンプルで
「歩いていました。」
「電車で見ました。」
「居酒屋にいました。」
「本屋にいました。」
などなど。
そりゃぁ歩くし電車に乗るし、
サワー飲むし立ち読みもするわいっ、
と心の中でツッコミを入れたくなるものばかり。
あまり悪い評判になるのも問題だと思うので、
例えば呑み屋でも様子をうかがったりする小心者の僕は、
正体がバレてないと確信するや
酔っ払った勢いでシャツを脱いで
ズボンまで下ろして騒いでしまったりします。
(いつもじゃないですよ。ほんのたま~に)
すると帰り際に、
「いつも見てますよ。」
などと言われ、酔いが醒めたりします。
たいがい言われるのはこんな場合ばかりで、
一流ホテルのレストランで
フランス料理を美女とともに味わっている時に、
「いつも拝見しております。
 よろしければ、こちらのシャトー・マルゴー、
 ささやかではございますが、どうぞ。」
などというのは一度もない・・・。

あるカレー屋さんに入りました。
出てきたカレーの不味いこと! 
どうやったらこんなに不味くできるのか聞きたいくらい
不味い。
まぁいいや残してさっさと出よう、
と思った瞬間、
「いやぁナポレオンさん、
 昔っから大ファンでねぇ。
 後でサインくれる? 
 いやいや、お代はいらない、ご馳走するよ。」
なんという悪夢。
残せないさっさと出られない、絶対絶命のピンチ! 
仕方ない、がまんして食べてしまおうと
スプーンを口元まで持ってくるのだが、
口がイヤイヤと激しく抵抗する。
忘れられない、あのカレーの味。

ある有名タレントさんが、
あまり大きな声に出しては言えないところに行きました。
「ねぇ、サイン、いただける? 」
ちょっとためらいましたが、
ぐしゃぐしゃに書いて
誰のサインだか分からないようにしておきました。
後日再び訪れると、サインがロビーに貼ってありました。
しかも、ちゃんと
「○○さんのサイン」という説明書きとともに。

なぎら健壱さんに聞いた話。
ビニ本なるものが流行ったころ、
サングラスにマスク姿で
そのビニ本を買いに行ったそうです。レジで、
「領収書は? 」
と聞かれ、思わず
「ちょうだい。」
と応えました。するとおじさんが、領収書に、
「なぎら様」
と書いたそうな。

木久蔵師匠の爆笑ネタ、
電車内で向かいの席のおばさんたちに
声をかけられました。
「あら~、いつも見てるわ~、ホラ、
 『笑点』の、あの有名な、黄色い着物の人。」
着物の色でしか覚えてない、
名前くらいちゃんと覚えろ~。

皆さん、苦労してるんだなぁ。

僕は電撃ネットワークのメンバーである
三五十五(さんごじゅうご)さんに
相当、似ています。
どこかで僕の悪いウワサを聞いた方、
それは実は僕ではなく三五十五さんなんですからね、
念のため。以前、
「電撃ネットワークだぁ、サイン下さい。」
違うよと断るのも面倒なので、出された色紙に
「電げきネットワーク」と書きました。
「撃」の漢字が書けなかったんだよ。

200枚のサインを頼まれてしまった。
出番の直前まで書いて書いて書きまくりました。
すっかりエネルギーを消耗して、
ステージではヌケガラ状態。
たかがサインと言うなかれ、意外と重労働と知りました。
お相撲さんの手形方式が羨ましかった。

浅草で仕事を終えて駅に向かう途中、
ダンボールに住んでいるおじさんに
声を掛けられました。
「よぉ、いつも見てるよ。
 応援してるよ。ねぇ、サインしてくれよ。」
おじさんが指差しているのは家、
つまりダンボールでした。
僕は家の正面あたりにサインしました。
その後おじさんはどこかに引っ越したのか、
僕のサイン入りの
ダンボール・ハウスの行方はようとして知れない。

2001-10-08-MON
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