MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

『想定外? 予想外?』

日本のあちらこちらから、
贈り物をいただく季節になった。
実にありがたく思う。

今日もピンポ~ンとドアホンが鳴り、宅配便が届いた。
箱の大きさ重さから、どうやらワインのようだと推測する。
はて、いったいどなたからの贈り物であろうか。
私は感謝の気持ちを抱きながら、
遠くに住む友人たちの顔を思い浮かべた。

だが、差出人の欄を見ると、
なんと私自身の名前が書かれているではないか。

そうだ、すっかり忘れていた。
ずいぶん前にネットで注文していたワインが、
今頃になって届いたのだ。
今日届いたワインは私から私へのお歳暮で、
私は私自身にしみじみと感謝していたのだった。


スタジオでマジックの収録があった。
1本あたり90秒の短い収録とはいえ、
1日で21本撮りという、
なかなかに厳しいスケジュールである。
リハーサルと時々のNGも含めると、
50本分以上も延々と収録することになる。

トランプを使ったマジックが多く、
普段はモデルなどをしている女性タレントさんに
トランプを選んでもらうことになった。
彼女は元気よくトランプを選び、私が訊ねる。

「あなたの選んだトランプは何ですか?」

彼女は大きな声で、

「わたしが選んだのは、ハートのキューです!」

ところが、彼女が手にしているのはハートのQ、
クィーンであった。

ハートのキューと聞けば、
どうしてもハートの9を思ってしまう。
私が困惑したままでいると、

「はい、すいませ~ん。いったん止めま~す」

ディレクターの声がかかり、NGとなってしまった。
ディレウターは慌てて、

「Jはジャックでね、
 Qはキューじゃなくてクィーンで、
 Kはキングで・・・」

と、緊急レクチャーし始めるのであった。
聞けば、最近はゲーム機で遊ぶばかりで、
実際にトランプで遊ぶことがないらしいのだ。

その後もトランプを使ったマジック収録は続き、
彼女は、

「わたしが引いたのは、ダイヤの、えぇ~っと・・・」

想定外のことではあったが、
トランプの中から絵札を外すという作戦が功を奏し、
その後の収録は順調に進んだ。


新聞記事で、矢神(やがみ)という名字を
失神(しっしん)と読み間違えた。
そのまま間違いに気付かず読み続け、
真面目な内容の記事は実に
不謹慎なものとなり、予想外の展開になっていった。


大阪のホテルでショーをすることになった。
マジックで使うライターが見つからず、フロントを訪ねた。
ホテル内の売店とかを教えてくれるのかと思いきや、
意外なことにタバコの自動販売機に案内された。
多くのタバコが並ぶ販売機の端っこに、
確かにライターもあり、

「お客さま、タスポはお持ちですか?」

「いや、僕は吸わないので持ってないです」

「はぁ、それではすぐにタスポを持ってまいります。
 少々、お待ちくださいませ」

ちょっと可笑しいやりとりをし、
やっと100円ライターが手に入った。
ステージの横で出番を待っていると、
担当者がやって来て、

「すいません、ステージは火気厳禁となっておりまして」。


私の甥っ子は岐阜市内で働きつつ、
アマチュア交響楽団に所属して
ヴィオラを弾いているという。
それを聞いて私は、

「へぇ~、意外だねぇ。
 我が家系に音楽家はいなかったのになぁ」

すると甥っ子が、

「おじさん、手品師もいなかったと思うよ」。

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2011-12-18-SUN
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