MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『人生ほどほど』

落語会にゲスト出演した。
会場は500席、実にやりやすい観客数だった。

落語会やマジック・ショーは、あまり大きな会場、
大観衆ではやりにくい。

以前、3000人の観衆を前に
マジック・ショーをしたことがあった。
やりにくくはないのだが、やはり後方の観客の反応、
驚いた表情などがまったく見えない。

同様に、後方の観客も
小さいマジックなど見えにくかったに違いない。

かといって、少なすぎるのも困る。
ある地方の寄席に出た際、なんと、
観客はたったの3人。

それでも、出演している我々2人よりは
多かったのだが、
「誰か、マジックのお手伝いをお願いします」
1人を高座に上げた途端、
高座3人対客席2人と逆転してしまった。

多すぎても少なすぎても困る。
だから、500人くらいがちょうどいい。
ごく普通の観客数が、やはり嬉しい。

初代・引田天功先生は大スターだった。
出演料、ギャラは大そう高かった。
弟子だった我々の耳にも、
驚きの金額が聞こえてきたものだ。

だが、そうなると苦労も多かった。
何百万ものギャラを得るとなれば、
ステージも大掛かりになる。

アシスタント、音響係、照明係など、
抱えるスタッフも10人以上。
様々な経費も高額となってしまう。

ショーの時間も1時間半、時には2時間近くなる。
その間、出ずっぱり立ちっぱなし喋りっぱなし。
次から次へと、観客を大いに興奮させなきゃいけない。

ギャラが高額だとプレッシャーも半端ないのだった。

かといって、少なくても困る。
以前のこと、出番を終えた我々に
業者さんが1枚の封筒を手渡し、
「これ、今日のギャラね」
と言い残して去って行ってしまった。

封筒の中を見ると、5000札が1枚だけ入っていた。
交通費、食費等の経費を引いて2人で分けたら、
200円だけ残った。
コーヒーも飲めないよ。

売れている芸人さんがいる。
羨ましいなぁと思う。
しかし、忙しそうですっかりくたびれている。

売れない芸人さんがいる。
近頃は芸人さんたちも高齢化になっていて、
若手といいつつ40歳を超えていたりする。
とても元気なのだが、その元気がなんだか切ない。

芸人さんは売れてても、売れてなくても大変だ。
多すぎず少なすぎず、適度に仕事があればいい。
ごくごく、普通の人生がいいと思う。

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2015-12-06-SUN
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