『凡人なおもて』
最近、おじさんはクヨクヨしています。
なぜクヨクヨしているのか、
その理由も分からず、更に弱ってもいます。
どのくらい弱っているかというと、
丸一日、何も食べていないような、
生命力衰退のような感じなのです。
弱っているうえに、クヨクヨしているから、
陰気でもあります。
「マジックだから、インキです」
最近じゃぁ、そう開き直っています。
へへへへへ。
不思議なことに、
気持ちは相変わらず楽天的なのでありますよ。
クヨクヨしつつ弱りつつ、
更に陰気でもあるのに、
それでも、
「今日はイマイチだけど、きっと明日は明るいよ」
なんて、思っているのです。
さて、クヨクヨの原因のひとつは、
「どうやら、おいらは凡才だねぇ」
と、なんとなく自覚し始めたせいかもしれません。
「えぇぇぇぇ? 今ごろ気づいたの?」
なんて笑われそうですが、
芸人になって数年後には薄々気づいていて、
最近やっと確信に至ったのです。
先日、ある番組に出演しました。
スタジオのひな壇には、才能あふれんばかりの、
文字通りのタレントさんがズラリと並んでいて、
まるで芸能界版『方舟』のよう。
俳優、歌手、お笑い芸人、文化人、
その他多士済々の、選りすぐりの方々が並んでいて
眩しいばかり。
でも、大きなひな壇に
ぎっしりと天才、異才が詰め込まれていて、
なんだか慌ただしくもありまして。
輝かしい才人が集う極楽浄土なのに、
例えが悪くて恐縮なのですが、
混み合った温泉のようでもありました。
その点、こちらは意外と空いています。
そりゃぁ、出番はちょいと短いけれど、
小ぶりの湯船にひとりひとり、
ゆっくりとぬるま湯にザブン、のような感じ。
出番を終えての帰り道、なぜか、
『凡人なおもて往生をとぐ、いわんや才人をや』
という言葉が浮かんできました。
よく分かりませんが、
人生はクヨクヨしてても弱っていても、
とにかく前に進んで行くのだなぁと思いました。
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