『あたしは、ひとり』
ちょっと前までナウなヤングで、
毎日フィーバーしてた皆さん、
いかがお過ごしですか?
私は最近、
やっとスマホというものを持ちました。
いやぁ、これまで電車の中で
スマホ画面に見入る大多数の人々を睨みつつ、
「なんでそんなにスマホに夢中になれるのかねぇ。
もとは電話でしょうよ。
それに、みんな、スマホ画面に
顔が半分飲み込まれてるようにしか見えないよ、
大丈夫かぁ?」
なんて思ってましたよ。
嫉妬というか嫌悪というか危惧というか、
複雑な感情を抱いていたものですよ。
時には、
「スマホを使ってるというより、
完全にスマホに使われてるんじゃないの?
歩きスマホって、あんたたち、
そんなに忙しく働いてんの?」
なんてね、イラついてもいたんですよ。
それが、自分もスマホ・ユーザーになった途端、
「やっぱ便利だねぇ、面白いねぇ」
さすがに歩きスマホはしないけれど、
気がつくと延々スマホ画面を見つめつつ、
「こうなりゃ腕時計も
スマホ・ウォッチにしてしまおうかな、へへへ」
相変わらず、生まれながらのお調子もん。
あぁ、情けない。
話は急に変わるが、私は左利き。
人類の、だいたい10%だろうか。
少数派、マイノリティ。
私はプロ・マジシャンである。
この職業もかなりのマイノリティで、
日本には100人ほどしか生息していないらしい。
好きな犬と散歩できるという施設に行った。
色んな種類の犬たちの中から私が選んだのは、
なんと不人気No.1の犬だった。
私は、犬の好みもマイノリティだったのだ。
そんなマイノリティの私が
ついにスマホ・ユーザーとなり、
晴れてメジャーになったのだが、
とうとう大勢に流されてしまったようで、
なんだか面白くない。
「へそまがりだねぇ」なんていわれてしまうが、
私はマイノリティが好きなのかもしれない。
究極のマイノリティ宣言をされた方もいる。
かの春風亭柳昇師匠のたまわく、
「大きなことをいうようですがぁ、
わが国ではぁ、春風亭柳昇といえば、
あたしひとり」
素晴らしい、実に素晴らしい。
私もあやかって、
「頭をぐるぐる回して、
それが世界一不思議なマジックと思う
マジシャンといえばぁ、わが国ではぁ、
否、世界でもぉ、あたしひとり」
そう宣言しようかな。
 
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