『浮くべきか浮かざるべきか』
私の『炭水化物、いつもの半分ダイエット』は、
未だ継続中である。
朝のパンを半分にし、昼のごはんも半分、
夜ごはんも茶碗に半分くらい。
お腹ぽっこり具合も減ってきたようで、
これまでベルトなしで履いていたパンツがゆるゆるになり、
ベルトなしだと脱げそうになる。
なにより嬉しいのは、人体浮遊術マジックが
以前のようにスムーズにできることだ。
人体浮遊術とは、観客から見えないところで
腕立て伏せを連続に行い、
浮いたり沈んだりしているように見せるマジック。
体が重くなればその分浮きが悪くなるわけで、
最近は関係者に、
「浮かない浮遊術というのも珍しい」
などと、皮肉たっぷりに非難されていたのだ。
それが『炭水化物、いつもの半分ダイエット』の
効果てきめん、軽快にフワフワと浮くことができた。
いやぁ、実にめでたい。
しかし、本音を言えば、
もっとごはんを食べたいと思う。
ラーメンだって蕎麦うどんだって、
たっぷり食べたいと思う。
けれども、麺類はごはんのように、
「半分くらいに減らしてください」
と頼みにくいから困る。
「食わないんだったら、来るなよ」
そう怒られそうで、最近すっかりご無沙汰なのだ。
ダイエット中に何度も、
「小太りの方が長生きするよ」
という、悪魔のささやきが聞こえてくる。
なんだか本当のような気がする。
それに、人体浮遊術がよく浮いたとしても、
「やっぱり痩せてから浮きが違いますねぇ。
よっ、すごい~!」
そんな観客はいない。
「実に面白いマジックですので、
勲章を差し上げましょう」
とか、
「とても良く浮いているので、
人間国宝に推挙いたします」
なんてお話もまったくないし。
それでも、なぜごはん半分だけで
我慢しているかと言えば、
私の人体浮遊術こそ、
世界でいちばん浮いていると思いたい、
つまりは自己満足のためなのだ。
すると後輩マジシャンいわく、
「小石さんは、マジック界ではすごく浮いた存在。
もう、世界でいちばん浮いているマジシャンですよ。
あっはっは」
おいおい。
 
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