『マッチ売りの少女・故郷編』
楽しい里帰り。
お昼頃に駅に到着すると、
いつものように次姉と姪が車で迎えにきてくれる。
「最近、良いところを見つけたんや」
姉の勧めで和食レストランへ。
なんとも美しく改築された古民家レストラン。
とはいえ、近所の家々も古民家のようなもので、
初めてだとどれがレストランなのか
迷うかもしれない。
「オススメは飛騨牛のすき焼きでございます」
美味しそうにグツグツ煮えてきた。
「卵を鍋に溶き入れていただいても、美味しいです」
ううむ、こんな食べ方は初めて。
割り下もビックリの味噌味で、熱々、うまうま。
初めて尽くしなのに、なんだか懐かしい味噌味。
田舎にもオシャレで美味しいレストランが
増えているんだなぁと感心しつつ、
今度は大型スーパーへ。
これがデカイ!
もう、信じられないくらい広い!
世の中にこんなに多くの種類の食べ物があるのかと
呆れるくらいの食品売り場が全体のほんの一部分、
衣料品、医薬品、DIYのコーナーも広々。
自分で飲む分のビールとワインを買い、
いよいよ実家へ。
親父は今年95歳、健在でありました。
やれやれ。
親父との生活時間は2時間以上、前倒し。
午後4時過ぎには、
「そろそろ、ビールでも飲むかぁ」
5時過ぎに風呂タイム。
軽い夕食を済ませ、再びワインやらウイスキーやら。
7時にはすっかりご機嫌になり、
「ほんなら、そろそろ寝るわ」
あまり健康的とも思えない親父の生活スタイル。
長生きの秘訣はさっぱり分からないまま、
「おやすみ~」
親父の背中を見送る。
翌朝5時、大音響で目が覚める。
親父がラジオを聴いているのだ。
耳が遠くなったらしく、家中に響き渡るほど大きく
鳴らしている。
やれやれ。
それでも私は起き上がらず、
布団の中でグズグズと粘り、
なんとか7時まで寝る。
朝ごはんは長姉の作るごはんと味噌汁、卵焼き。
食後、コーヒーを飲みつつ長姉と四方山話。
なぜか、トイレの消臭剤の話になり、
「いちばん良い消臭剤はね、マッチやよ。
マッチ1本、シュッとすれば、
スッと臭いが消えるよ」
なるほどと感心しつつ、
『マッチ売りの少女』のお話を思い出す。
マッチ売りの少女も、長姉のマッチの使い道を聞いたら
さぞかし驚くに違いない。
長姉は続けて、
「旦那がプッとした時も、すぐにマッチをシュッ。
旦那は嫌がるけど、ええよぉ、マッチ消臭作戦」
長姉の話は『マッチ売りの少女』から
『かちかち山のたぬき』に移行、
故郷は変わらず平和なのであった。
 
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