『私の好きなもの』
< 釣り >
今年の夏は、未だ釣りに行けてない。
そろそろ禁断症状が出そうだ。
それくらい、釣りが好き。
子供の頃、父に連れられて釣りに出かけた。
深くてゆったりとした流れに釣り糸を垂れて、
父は静かに竿の反応を待つのだった。
いつしか私も釣りを覚えた。
私のはテンカラ釣り。
餌はすべて作り物の毛針。
そいつを浅瀬に流す。
かすかな、微妙な当たりを竿に感じて、竿を上げる。
小さな魚が、針にかかって揺れている。
小さいのに、しっかりと生き物のチカラを感じる。
針から外し、魚は川に戻す。
あぁ、たまらない。
私は釣りが大好きだ。
< ダンシング・ステッキ >
私はダンシング・ステッキというマジックが
大好きだ。
なぜなら、私が唯一、
上手に演じられるマジックだから。
某遊園地で売っているダンシング・ステッキは
素晴らしい。
まるで魔法のようにステッキが宙を舞う。
そいつを買って、遊園地を振り振りしながら帰る。
同じステッキを買った子供たちが、
「おじさん、僕のステッキは
おじさんのみたいに浮かないよ。
ねぇ、おじさんのと替えてくれない?」
残念ながら、取り替えても
すぐにはステッキは宙に舞わないんだよ。
おじさんは、これが大好きだから、
魔法のように舞わせることができるんだよ。
< 色川武大さん >
私は色川武大さんのエッセイが好きだ。
色川さんは朝になると腹ペコになる。
早朝なので開いている店は少ない。
そこで、色川さんは
駅前の立ち食い蕎麦屋に駆けつける。
すると、店の前に色川さんのファンが待っていて、
色紙にサインをねだられる。
色川さんはついつい見栄を張り、
立ち食い蕎麦屋さんを通り過ぎる。
そうして、ファンが立ち去るのを待つ。
そんな人間くさい色川武大さんの作品が大好きで、
目にした途端、買ってしまう。
読む前にすでに嬉しい。
それほど好きな本があるって、幸せだ。
私は色川武大さんのエッセイが大好きだ。
 
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