『おじさんの意外と楽しい日常』
< 林檎のテレビ >
林檎マークのテレビ・チューナーがあると聞いて、
さっそく表参道の林檎マークの店に行った。
ヒゲ面のスタッフが説明してくれる。
「ここにありますよ。
◯×*を#$%すれば、OKですよ」
デジ音痴のおじさんにはサッパリ分からない。
ていうか、詳しい人だけが理解できる説明のような。
最近はネットで調べてネットで買う人が多い。
でもね、おじさんは店に行って話を聞いて買う習慣が
まだ抜けてないのですよ。
スタッフさんの、
「もう、ホントに簡単すよ」
という言葉を信じて買うことにした。
家のテレビに接続したら、
本当に簡単に映像を観ることができた。
とても嬉しかった。
デジタルに強い人は、こんな些細なことで
喜びはしないだろう。
でも、デジ音痴おじさんはすごく喜べるのですよ。
むふふ、むふふ。
< 記憶すべきか、忘れるべきか >
久しぶりに友人たちと呑み会をした。
翌日、なにを話したか、すっかり忘れている。
困ったもんだ、うん。
毎晩のように、同じ店で呑むおじさんたちがいる。
すっかり忘れてしまった昨日の記憶を取り戻すために、
おじさんたちは今日も呑むのだろうか。
「いやいや、そうじゃなくってさ。
同じ店で同じ仲間と同じもの呑んで喰ってりゃぁ、
次の日に記憶がなくても気にならないからだよ。
だいたいさ、記憶がないってことは、
忘れていいことに決まってるし。
それにさ、酔っ払った夜の記憶なんて
苦いかもしれないし。
忘れちゃえってことだよ」
おじさんたちの日常は、なかなかに味わい深くもある。
< 初心者 >
あの師匠が言っていた。
「オレは老いの初心者なんだよ。
毎日、自分で自分の体ァ、よく分かんねぇんだよ」
そうかぁ、そういうものか。
師匠にならえば、今日のおいらは
今日の初心者なのかもね。
そう考えると、鏡に映る見飽きた顔に、
「おい、今日の初心者、あわてないでしっかりな」
自分で自分を励ましたりして。
へへへ。
 
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