magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『冬のハンモック』


ちょいと寒なってきたので、
ハンモックを片付けることにした。

片付けながら、買った日のことを思い出す。

何年か前の夏、デパートの特設売り場に
ハンモックが展示されていたっけ。

横に、アロハシャツ姿がサマになってなっている
青年がいて、
「ハンモックに乗って下から扇風機をゆる~く。
 これでもう、エアコン、いりませんよ」

その笑顔が爽やかで、
「どうぞ、乗ってみてください」
なんて誘うから、ついつい乗ってしまう。
 
ふむふむ、確かに気持ちがいい。
体重が半分になったような、不思議な浮揚感。
値段を聞けばな、な、なんと1万円以下、
私はすぐさま購入を決めた。

「で、取り付け金具が3種類、ありまして」

なんと、高いのはハンモック本体より高いじゃないか。

でも、金具なしじゃ取り付けられないし、
高いのがやはりかっこいい。

さて、家に帰ってみると、
今度はどこに取り付ければいいのか分からない。

我が家をリフォームしてくれた工務店のKさんに聞くと、

「吊るす場合、柱が入ってれば70kgは大丈夫です。
 間違ったところに付けると、落ちるかもしれないです」

ハンモックに揺られて涼しく昼寝、
なんて目論んでいたのに、
ドスンと落ちては痛い切ないかっこわるい。

Kさんに取り付けをお願いすることにした。
さすがプロ、6cmの長いネジ8本、
いとも簡単にねじ込んでくれた。

しかし、私は内心、ちょっと心配になった。

ハンモック本体は1万円以下なのに、
取り付け金具は2万円弱、
それに加えてKさんへの手数料も
払わなければいけない。

「エアコン、いりませんよ」

青年の言葉にすぐさま
電気代の節約が浮かんだのだが、
この分じゃ節約分を回収するのに
何年ハンモックに揺られたらいいのだろう。
やれやれ。

「試しに乗ってみてください。
 おっ、いいですねぇ。
 そうだ、写真、撮りましょうか」

スマホで撮ってもらった。
網にかかった魚のようだった。
ははは。

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2017-11-05-SUN
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