『美しいおじさん』
昨年暮れに収録した番組が放送された。
録画しておいたのを観てみると、
トーク・コーナーで私がペラペラとしゃべっていた。
「そうそう、僕、今、
男性専用ネイル・サロンに通っているんだよ。
なんでかって?
そりゃぁ、美しいおじさんになるためだよ。
今でもまぁまぁ、美しいけどね、わっはっは」
残念ながら、映っているのは美しいおじさんではなく、
変なおじさん。
あぁ、情けない。
まぁ、でも仕方ない。
これが私の現実の姿。
おしゃべりはまだまだ続き、
「あの、◯リックさんているでしょ。
あの人のパロディで
Mr.ガーリックていうのを考えてさ。
◯リックさんはうさんくさいけど、
私はニンニク臭い、へっへっへ」
このパロディで◯リックさんに
すっかり嫌われたというのに、
まるで反省の色すら見せず、
嬉々としてしゃべり続けている。
我ながら、人間ができていない。
もう、良い年こいたおじさんだというのに。
まぁ、でもいいか。
その後も延々としゃべり続け、
やっとネタ・コーナーが始まった。
空の箱から多くのココナッツが出現するマジック。
「何もない箱からココナッツが
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、
いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、
ここのっつ、ココナッツ~!」
電球が念力で粉々になるマジック。
「電球が見事に念力で割れました。
でんきゅう・ベリー・マッチ~!」
おじさんダジャレ・マジック連発。
本当に申しわけありません。
あぁ、さすがに恥ずかしい。
プロ・マジシャンになって今年で41年目、
見事に進歩なし。
むしろ、退化してるんでないかい?
やばい。
せめて身だしなみだけは整えよう。
そうだそうだ、それがいい。
私はネイル・サロンと美容室の予約を取った。
帰る頃には見違えるように美しいおじさんに
なっているはず。
私は、まだまだ夢と希望を捨て去ってはいないのだ。
あっはっは。
ふっふっふ。
 
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