ライフ・イズ・マジック

人生はマジックだ、なんて言い方そのものが怪しいでしょ。
ひょっとしたら、マジックってのは、
宗教の種かもしれないし、驚きの商品化かもしれないし、
人類最古の情報産業だったりもして。

軽い笑いもとれるし、ちょっと好かれたり嫌われたり、
ひとつの国をまるごとだまし取るようなこともできる。
いま、マジックを考えたり感じたりするのは、
なんだかとても大事な気がするんですよ。

おおげさな紹介はよしましょう。
マジック・ナポレオンズのパルト小石さんです。どうぞ!

ナポレオンズのHPは
http://www.tvland.co.jp/napoleons/
e-mail:napoleons@tvland.co.jp

棚ボタ幸福論

どうやら、私は幸せ者であるらしい。
ただ、具体的にどこがどう幸せなのかと問われると、
答えに窮してしまうのだが。

仕事は日雇い芸人、時に地方に出かけて
マジックショーなどを披露する。
ちょっとでもウケれば、それでまぁまぁ、幸せ。

仕事のない日は、失業者。
となれば不幸なのかもしれないが、
もう慣れっこになっていて気にならない。

失業の日は、
「ふっふっふ、今日は何して遊ぼうかな」
「ちょっと遠くまでウォーキングしちゃおうかな」

それはそれで、楽しいかも。
これでなかなか、ハッピー。

朝早くの新幹線や飛行機に乗って、
遠くまで出張公演の日もある。

むりむり早起きして、
冷たい風に吹かれながらの長旅。

なんだか不幸っぽいが、行ったことのない駅や
空港に降り立った瞬間、
なぜか少年のような気分になる。

仕事のこと、あるいは来し方行く末を一瞬忘れ、
「私は誰?ここは何処?」
人生の初心者になったような、不思議な高揚感。

私は岐阜の小さな町で生まれ育った。
高校生になって、やっと遠出を経験。
といっても、名古屋までくらいがせいぜい。

そのせいか、旅が好きだ。
これまで47都道府県、
すべてに旅をしているかもしれない。

仕事だから、駅から車で公演先に向かい、
終わったら駅にとんぼ返り、なんてこともある。
それでも、旅の気分にゆるりと浸る。

「だいたいねぇ、お前さんたちの芸は、
 飛行機や新幹線に乗せてまで
 見せる芸じゃぁねぇんだよ」

なんて師匠に言われたりもするが。

そんな師匠が、帰りの新幹線で
缶ビールをご馳走してくれる。

「へい、お疲れさん」

ちょいと幸せな味がしますよ、師匠。

「芸ってのは、棚ボタなんだよ。
 つかみに行ったって、つかめるもんじゃぁない。
 上を見て、落ちてくんのを待つんだよ」

なるほど。
幸せっていうのも、案外、棚ボタなのかも。
ですよね、師匠。

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