ライフ・イズ・マジック

人生はマジックだ、なんて言い方そのものが怪しいでしょ。
ひょっとしたら、マジックってのは、
宗教の種かもしれないし、驚きの商品化かもしれないし、
人類最古の情報産業だったりもして。

軽い笑いもとれるし、ちょっと好かれたり嫌われたり、
ひとつの国をまるごとだまし取るようなこともできる。
いま、マジックを考えたり感じたりするのは、
なんだかとても大事な気がするんですよ。

おおげさな紹介はよしましょう。
マジック・ナポレオンズのパルト小石さんです。どうぞ!

ナポレオンズのHPは
http://www.tvland.co.jp/napoleons/
e-mail:napoleons@tvland.co.jp

花見会・平成最終章

< 桜と焼肉 >

「焼肉を食べながら、
 桜を見られる店があるんですよ。
 小石さん、行きませんか?」

ふたつ返事でOKした私は、
急ぎ足で焼肉店に向かった。

案内されて席につくと、オーナーさんが、

「この席だけ、額に入った桜の絵のように、
 窓から道の向こうの桜が見えるんです」

確かに、細い道の向こう側に桜の大木が
満開の枝を四方に伸ばしている。

桜を愛でながら、おいしい肉を焼く。
タン塩にネギをたっぷり乗せ、
そいつをくるりと巻いて口に放り込む。

肉の脂の甘みとネギの苦味、
それらをしっかり噛み締めたら、生ビールを投入。
これぞ三位一体、じゃなくて三味一体。

さて、お次はハラミですよと網に乗せ、
ふと窓の外を見ると、道は大渋滞。

桜を隠すように、大きなトラックが止まったまま
動かない。
サクラの絵が、トラックの絵に変わったのだ。

と、運転席のおじさんと目が合った。

「まだ5時過ぎたばっかり、なのにお前ら、
 焼肉でビールかい。
 こちとらまだまだ仕事、しかもこの渋滞」

「俺のトラックで桜が見えないから、
 とっとと動け、走り去れ、みたいな顔しやがって」

とでも言っているように思えた。

すると同席の友人、タレを絡ませたハラミを
口に入れ、わざとらしく恍惚の表情を浮かべるではないか。

あおり運転ならぬ、あおり焼肉。

おじさんが怒って飛び出してくるかと思いきや、
急に道が空いて走り去った。
再び平和な桜の絵が、窓に戻ってきた。
 
 
< 桜とマジックと真実 >

マジシャンが集う花見会が、毎年ある。

幹事の方がマジックに造詣が深く、
氏のおメガネに叶った優秀なマジシャンだけが
招かれるという、
マジック界でウワサの花見会。

ご馳走とおいしいワインを存分に味わい、
ダメなマジシャンの悪口を言い合いながら、
ライトアップされた桜を愛でるという、
実に品の良い花見会。

途中で、自慢のマジックを披露し合う。

「じゃ、小石さん、1枚引いてください」

満開の桜に負けない、鮮やかなマジックの花盛り。

トリはやはり、幹事さんのマジック。
なにこれ、この不思議なマジック。
私もマジシャンだけど、タネがまるで検討つかない。

こんなすごいマジシャンだけを招く花見会に、
よくもまぁ、私を呼んでくれるなぁと、
いつも疑問に思っていた。

しかし、私は初めて気づいてしまった。

毎年欠かさず呼ばれるのは、
私がマジックを見て驚く、とっても珍しい、
おそらく唯一のマジシャンだからということに。

マジシャンばかりの花見会には、
見てびっくりする役、『サクラ』が必要。
おいおい。




明るく軽く親切なのに。
 ほんの少し悲しみの味がするのだ。
 マジックというのが、もともとそういう
 素性のものなのだろうか。ー
        糸井重里(帯コピーより)

「神様の愛したマジシャン」
著者:小石至誠
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「ライフ・イズ・マジック
 種ありの人生と、種なしの人生と」

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