ライフ・イズ・マジック

人生はマジックだ、なんて言い方そのものが怪しいでしょ。
ひょっとしたら、マジックってのは、
宗教の種かもしれないし、驚きの商品化かもしれないし、
人類最古の情報産業だったりもして。

軽い笑いもとれるし、ちょっと好かれたり嫌われたり、
ひとつの国をまるごとだまし取るようなこともできる。
いま、マジックを考えたり感じたりするのは、
なんだかとても大事な気がするんですよ。

おおげさな紹介はよしましょう。
マジック・ナポレオンズのパルト小石さんです。どうぞ!

ナポレオンズのHPは
http://www.tvland.co.jp/napoleons/
e-mail:napoleons@tvland.co.jp

おじさんの朝は色々

朝5時に目が覚めてしまった。
それも、バッチリ目がさえて
二度寝もできそうにない状況。

理由は単純、空腹で目が覚めてしまったのだ。
腹が減っては朝寝もできぬ。
起きてお腹を満たし、二度寝してみようか。

それでも、布団の中で体を丸めて
ウダウダしていると、
色川武大先生のエッセイの一節が浮かんでくる。

色川さんの本を読み、
「この方こそ、我が人生の師」
と、私は勝手に信奉しているのだ。

色川先生も、早朝に空腹になることが
多かったらしい。

それで、何かを食べに行こうとするのだが、
なんせ早朝、やっている食べ物屋はそうそうない。

仕方なく最寄り駅まで歩いて、
立ち食い蕎麦屋に入ろうとするが、
そういう時に限って、見知らぬ青年が立ちはだかり、
「サイン、お願いします」

色川先生は快くサインをするのだが、ついつい、
「立ち食いなんて、しないもんね」
とばかりに、立ち食い蕎麦屋を通り過ぎてしまう。

色川先生、近くに隠れて
青年が立ち去るのを待つのだが、
青年は一向に立ち去らない。

蕎麦は食いたい、が、見栄もある。
あわれ色川先生、空腹を抱えて途方にくれる。

敬愛する色川武大先生も人、
見栄をはることもあるのだなぁと、
むしろ微笑ましく思う。

さて私の空腹はどうしたものか、
最寄りの駅に立ち食い蕎麦屋さんはないし。

と、そこで思い出した。
近所のパン屋さんの店先に
野菜などの朝市が立つ、という噂を耳にしたばかり。

パン屋さんでパンを買い、
朝市の野菜を挟んだサンドイッチを作れば、
健康的で美味しい朝食が食べられるはず。

朝7時、たくさんの有機野菜が入った
ダンボールのかたわらに、青年が立っている。

私の顔を見て、
「サイン、お願いします」
てなことを言うはずもなく、
ただぼんやりと立っている。

きっと、まだ暗いうちから収穫作業を続け、
休む間もなく車を走らせ、
ここで並べて売っているのだろう。

家に戻り、買ってきたズッキーニとトマトの
サンドイッチを作って食べた。

ほのかに土の香りがする野菜サンドイッチを
色川先生が食べたら、
いったいどんな感想を述べられるのかなぁと、
しばし夢想した。




明るく軽く親切なのに。
 ほんの少し悲しみの味がするのだ。
 マジックというのが、もともとそういう
 素性のものなのだろうか。ー
        糸井重里(帯コピーより)

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