新・ナポレオンズ小石の無菌室日記3
2020-05-03
こんな私にも弟子がいて、時々連絡をくれる。
連絡が来るのはほぼ100%、悩んでいる時。
弟子「実は新型コロナ・ウィルスのせいで
仕事が激減してまして」
私「それは良かったね」
弟子「何がですか?」
私「だって、仕事がないのはコロナのせいって、
原因が分かってて良かったじゃないか。
てことは、コロナが終息すれば仕事も戻る。
はい、これにて一件落着、はっはっは」
弟子「師匠、笑ってる場合ではありませんよ。
この先、どうしたらいいものやら」
私「今の私は収入がない上に
入院費を払わなければならない。
『どうしたらいいものやら』は私のセリフだよ!
まぁ、それはともかく、いまは仕込みの時。
いつかくる仕事のために、
あれこれ練習する時と思いなさい」
弟子「マジックの練習はしてるんですが」
私「ダメだよ、
そんなテクニックばかりの練習してちゃ。
鏡に向かって陰々滅々とマジックの練習なんて、
芸まで暗くなっちゃうよ。
だから『マジック・陰気(インキ)』
なんて言われちゃう、へへへ。
それよりシャベリの練習だよ。
いつも明るくシャべってれば、気持ちも芸風も
明るくなるってもんさ」
弟子「とにかく、東京に行って
お話を伺いたいと思いまして」
私「ダメ、絶対に止めてくれ。
外からコロナ菌を持ち込まないでくれ。
だいたい、病院は面会中止だし。
密談・密約・機密費だっけ?
みっつの密はダメ」
弟子「なんか違うような気がしますが」
私「とにかく、マジシャンという職業は
日雇いの肉体労働者。
仕事がない日は失業者、仕事がある日は勤労者、
そう思ってればいいのだよ。
私なんぞは当初、失業にすっかり慣れて、
たまの仕事は不慣れで失敗ばかり、ははは。
でもさ、それでも飽きないのが
マジシャンという職業。
飽きない限りは続ける、それが芸人てもんだよ」
弟子「なるほど!
僕も、まったく飽きてません」
私「でもさぁ、
自分が飽きる前に客に飽きられたりして。
あっはっは」
弟子「・・・」
ー明るく軽く親切なのに。
ほんの少し悲しみの味がするのだ。
マジックというのが、もともとそういう
素性のものなのだろうか。ー
糸井重里(帯コピーより)

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