YOSHIMOTO
吉本隆明・まかないめし。
居間でしゃべった
まんまのインタビュー。

第8回。

98・10月のある土曜日。吉本隆明さんの家。
場所は、吉本さんの家。

長い長い話をしたものを、細切れに
ここに掲載しております。

ながらく掲載の間があいていましたが、再開です。
できるかぎりナマの状態で文字化した、
「しゃべったまま」の掲載ですので、
多少読みにくいかもしれませんが、
声を想像して読んでくださると、うれしいです。
意外と江戸下町の「べらんめぇ調」なんですね、などと、
驚かれたりもしています。
4月26日発売の「週刊プレイボーイ」でも、
『吉本隆明・悪人正気頁』という
変則的な人生相談の企画もスタートしました。
合わせてお読みください。
そっちの第1回は「仕事について」です。
かなりラジカルな語りになっていますよー。

これを機会に、新しい読者の方々は、
はじめからお読みになってくださることを希望します。
で、この第8回は、
<アメリカのことを話している・2>です。

吉本 僕のはろくなことない・・・よた話だけど、
糸井さんの言ってることは、
アメリカ論として、ちゃんと、
論議の対象になりますから、
そりゃあもう、いいと思いますけど。
糸井 ただの床屋談義なんですけども。
吉本 いや、ちょっとおもしろいですね。
僕らは、アメリカってどうなんだろうな、
これからアメリカ、どうなっちゃうのかな
というのがあるんですよね。

経済的にも、
それから軍事的にもそうだけど、
過剰な責任を自分が背負い込んじゃって、
世界中どこでも、警察じゃないけど、ちゃんと人を
配置して考えていこうとしている。
経済的にもそうですしね。

僕が思うには、日本の経済不況みたいのが、
なかなか直んなかったら、
その次は、もうアメリカが出張ってきて、
金融援助みたいなのを日本にして、
そのかわり、向こうの金融専門家みたいなのが来てね。

それで、日本の経済、
こうせい、あれせいって指図する。
次の段階は、そうだと思うんですね。

だから、日本が、独力で不況を離脱できなかったら、
そうなるだろうなと思うんですよ。

そうすると、余計なお節介してくれるなと思うけども、
きっと、それ以外に、
ちょっと方法がないんだろうなと思うんですね。
日本がつぶれると、
世界経済の三分の一はつぶれるということになりますか。
そうはさせないためには、やっぱり、
アメリカが出張ってくる以外にないと、こうなります。

そういうこととは、今、糸井さんの話と
関連するわけですけど。
そうすると、余計なことをするとか、
主権国家に対して、
勝手に端から侵すようなことを言ったり、
やったりするじゃないかということになりますけどね。

僕、思うには、しかし、それは、
日本の政府、政党に対しては、
政党にとってはそうだけどね。
日本の一般の、何といいますか、国民といいますか、
国民一般にとっては、悪いこと言っていないんですよ。
アメリカが要求していることでね。
一般にとっては、早くやれ、早く不況から脱しろとか、
金融機関は整理して、それで、
社員をリストラしろって言ってるんじゃなくて、
首脳部で無能なやつは
みんなすっ飛ばしてかえちゃえとか言っているわけですね。
糸井 平にしろっていう話ですね。
吉本 そう、そう。言ってるわけですよね。

だから、それ、いずれも国民一般にとっては、
悪いこっちゃねえ。これは昔からそうで。
何かカードは、二十四時間、
全部有効に使えるようにしろとかって、
前からそういうことを言って。
そのときから、とにかく、
一般の人にとっては悪くないんですよ。

だから、黙ってりゃあいいっていうふうなもん
だろうと思うんだけど、でも、何ていいますか、
政府筋とか、政党筋から見れば、余計なって、
ほんとは思いますし、感情的にも、まあ、やっぱり、
日本は日本なんだからと、こうなりますけど。
でも、アメリカは過剰に世界中を背負いこんで、
それで、何とか自分流でもって、
自分たち流のやり方と考え方と、
それから、これがいいと思うことを、
やりまくっているというね、今、感じ。

さて、それでどうなんだ。
これから、どうなんだっていうことは、
やっぱり、大きな問題になると思えるんですよね。

だから、それは、まあ、ちょっと
直接経済問題とか軍事問題とか、
そういうことで言わないと、
糸井さんみたいに、今のようなところからいけば、
かなりな程度、わかりいいというか、
見通しがつきやすいぞみたいな気がしますね。
真っ正面からいくと、ちょっと……。
糸井 個々の問題、難しいですもんね。
 
吉本 難しいですよ。難しいですよね。
それで、何と余計なことをするんだ
というようなのばっかり、アメリカはやっていますけど。

その違う面から見ると、いやぁ、やっぱり、これは、
言い出しっぺなんだから、
力持ちなんだから、注意しようがねえじゃねえか。
ほかがぽしゃったら、
自分らが自腹を切ってやるよりしようがないじゃないか
という面から言えば、まあ、
妥当なことをやってることになると思うんですけどね。

だから、しかし、そんなことして、
アメリカはどこまで、どう行くかというのは、
僕も、問題だよなというふうに思いますね。
糸井 そんなに長い寿命じゃないですよね。
吉本 ないと思うんですけどね。
そこはやっぱり、問題な気がしますね。

そうすると、ちょっと違う側面からすれば、
わかりがいいということはありますからね。
今、糸井さんの言ったようなところからいくと、
わかりが、まあ、どこで、破れ目が出るかなというのが、
とても、わかりがいいように思いますね。
糸井 当面の手当てとしては、
アメリカの言うとおりなんですよね。
吉本 そうなんですよね。
糸井 れは、もうしようがないんで。
吉本 そうですねぇ。

1999-04-27-WED

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