ほぼ日刊イトイ新聞

マンガでドミノ

『夏目友人帳』

『夏目友人帳』

著者:緑川 ゆき
発行:白泉社
夏だし、妖怪モノつながりで、
がらりと印象を変えて『夏目友人帳』はどうでしょう。

主人公の夏目少年は、
人ではないものや、妖怪が見える男の子。
その力のせいで、まわりの人達から遠巻きにされ、
自ら歩み寄ることもうまくできずに、
孤独な幼少時代をすごします。
そんな彼が、
招き猫を依代に封印されていた妖怪の斑と出会い、
「友人帳」をめぐるお話は始まります。

「友人帳」とは、夏目の祖母であるレイコの遺品。
それは妖怪たちにとって大きな脅威であり、
また反対にひどく魅力的な力も秘めているもの。
祖母の遺品を守りたいという夏目と、
彼の死後は「友人帳」を譲り受けるという条件で、
用心棒を引き受ける斑(通称ニャンコ先生)。

この1人と1匹が、様々なものと出会い、会話をし、
心を触れ合わせていくさまが
大切に大切に、描かれている作品です。
人間であれ妖怪であれ、
懸命に何かを想う気持ちというのは、
シンプルだけどまっすぐ心に響いて、
ゆさぶるものなのですね。
そんなそれぞれの繋がりや絆を経て、
夏目やそのまわりも、ゆっくり変化していきます。

読むと暖かく、清々しくなるお話です。
木々の深い場所、忘れられたような小さな祠、
そんなものを見ると、このお話の
ちょっと不気味でユーモラスな存在のことを思い出します。

(きさたに)

2011-08-13-SAT