『夏目友人帳』
著者:緑川 ゆき
発行:白泉社 |
夏だし、妖怪モノつながりで、
がらりと印象を変えて『夏目友人帳』はどうでしょう。
主人公の夏目少年は、
人ではないものや、妖怪が見える男の子。
その力のせいで、まわりの人達から遠巻きにされ、
自ら歩み寄ることもうまくできずに、
孤独な幼少時代をすごします。
そんな彼が、
招き猫を依代に封印されていた妖怪の斑と出会い、
「友人帳」をめぐるお話は始まります。
「友人帳」とは、夏目の祖母であるレイコの遺品。
それは妖怪たちにとって大きな脅威であり、
また反対にひどく魅力的な力も秘めているもの。
祖母の遺品を守りたいという夏目と、
彼の死後は「友人帳」を譲り受けるという条件で、
用心棒を引き受ける斑(通称ニャンコ先生)。
この1人と1匹が、様々なものと出会い、会話をし、
心を触れ合わせていくさまが
大切に大切に、描かれている作品です。
人間であれ妖怪であれ、
懸命に何かを想う気持ちというのは、
シンプルだけどまっすぐ心に響いて、
ゆさぶるものなのですね。
そんなそれぞれの繋がりや絆を経て、
夏目やそのまわりも、ゆっくり変化していきます。
読むと暖かく、清々しくなるお話です。
木々の深い場所、忘れられたような小さな祠、
そんなものを見ると、このお話の
ちょっと不気味でユーモラスな存在のことを思い出します。
(きさたに) |
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