CAKE
マリーな部屋。

涼の菓子

梅雨に入ってしまいました。
せめて、ひんやり涼し気なお菓子を。

いやー、しかしほんと、
日本には季節を細かく映す言葉がありますよね〜。
こういうの、財産なんでしょうね〜。
その、ゆっくり微妙に移り変わっていく季節を、
色で、香りで、風味で際立たせてくれるのが、
着物だったり、便箋だったり、和菓子だったり。
この遊びかた、先人の感性……粋ですよね〜〜。

特に、季節が変わる頃って、季節を感じません?
(その季節のまっ只中より)
「あ、もうすぐ梅雨かな」っていう雨の匂いとか、
水の温度が少し上がった春先とか、
あと2、3枚でぜんぶ葉っぱが落ちる11月の街路樹とか。
ゆっくり季節が移っていくのって、
何度味わってもイイもんです。

で、お菓子にもまさに季節をうま〜く感じさせる
小洒落た逸品、ありますよね〜。
この感じさせ方、「う〜〜ん、エライ! スゴイ!」
と唸ってしまうモノが。
例えば……京都・和久傳の『西湖』
これは、唸りました……。



笹の葉にすっぽり包まれたでんぷん菓子
(何でも「れんこん」から作ったそうな……)なんですが、
なんともヒンヤリしてて食感が、たまりません。
寒天ほどコクコクしてなくて、
くずきりよりプルンとしてて。

味は和三盆糖と書いてありますが、
どっちかというと黒みつの香り。
(に、私は感じてしまいました……)。
黒砂糖ずきには、こたえられない味覚なんですね〜!
笹の葉をそっと開けて、ツルツルッといただくと
身体の温度がちょっと下がったような気がするくらい
涼やかなお菓子です。
京都の紫野・和久傳ではもちろんですが、
東京では銀座の松屋と新宿の伊勢丹の地下で
扱ってるようです。

同じく京都・鍵善良房の『笹のしずく』
これも、有名ですよね〜。
書くまでもないかもしれないですけど、
このアイデアは、やっぱりスゴイ……。
竹のひと節に入れた水羊羹を、
そっと少しずつ出して、切って食べるんですけど、
並みの知恵、遊び心じゃありませんよね〜。

紅茶を誰が最初に見つけて飲んだかより、
ずっと私には興味があります。
(だって、紅茶とか納豆とかは多分ハズミですよね?
どう考えても。あれを熟考してヒネリ出せるヒトなんて、
ないですよ。いたら会いたい!)
ここまでアイデアひとつで、人を涼ませるなんて
心から尊敬してしまいます。
楽しくて、おいしいしね!

でもこれは、デパートで置いてるの、
あんまり見たことないですね〜。
(あっても知らないだけかもしれませんけど)。
京都の鍵善さんにきいてみてください。
あと、ちなみにこの『笹のしずく』に似たモノは
いっぱいあって、それぞれガンバッてはいるのでしょうが、
やっぱりココのにはかなうのはないですね〜。

「あ、もうすぐ夏だ...」と胃の腑が感じる
涼しい和菓子、2点でした。
そろそろ、赤坂あたりには風鈴売りが来るかな。
地下鉄の表参道の駅に南部風鈴が吊るされるのも、
多分もうすぐ! よい梅雨を。(って言わないかな?)

わたなべ まり

1999-06-15-TUE

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