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雑誌『編集会議』の連載対談
まるごと版。

1.ひさしぶりです、原田永幸さん篇。

第2回 ウェブはメディアとしてどうなるの?

原田 世の中って、メディアが進化すると同時に
ライフスタイルも変わってくるじゃないですか。
例えば、電話がない時代と
電話の時代では、価値観も変わってきます。
ラジオの時代とテレビの時代でもそうです。
ぼくらは赤銅鈴之助を見て・・・
糸井 誰もわかんないって(笑)。
原田 ラジオもね、真空管ラジオでしたよ。
吉永小百合と赤銅鈴之助、ね。
そのときっていうのは、ラジオのなかで
場面を一生懸命想像しているわけですよ。
今の子供たちって、そういう機会がゼロでしょ?
まず「見る」んですから。そういう想像がないんです。
もちろん、それがいいのかどうかは
また別だと思うんですけど。

それと同じように、
時代もライフスタイルも変わってきたし、
特にインターネットになったときには、
めちゃくちゃメディアが多様化しますよね。
どれを選択するの?からはじまるでしょ?
そうすると送り手は絶対差別化しますよ。
今のマスメディアっていうのは、
「サッチーだ」って言うと
みんなサッチー攻撃になりますよね。
糸井 幕の内弁当だらけですよね。
原田 ところが、サッチーのことをとらえても、
あるひとが賛成、あるひとが攻撃と、
いろんなメディアのアプローチが出てきて、
はじめて送り手のビジネスが成立が成立する、
こういうことでしょ?
それだけ多様化しますよ。
そのとき受け手は、選択すると同時に、
判断するという能力を身につけないと、
とんでもないことになる。
もう、大混乱でしょうね。

*ここで司会の方が段取り説明をした。が・・・。
糸井 いや、今回はもう、雑談ですから。
原田 テーマと全然違う方向に行く(笑)。
糸井 会社かまえちゃったひとのやることっていうのは、
基本的には、どういう場所にどういう土地を買って、
どういうお客さんに来てもらいたいかを
決めるわけですけど、それは、
ある程度まではシステム化できるんですよ。
さてそれができあがったところで、
何日から何日までどういう演劇をやるのか?
歌い手としては誰で、どんな歌をうたうのか?
どういうようなお客さんに満足してもらうのか?
・・・ところが、今のところは
そこのあたりに向けての考えが抜けているんです。

自動車会社は自動車をつくれるけれど、
運転はレーサーがやっています。
そういうレーサーにあたるところが、
いずれは必ず足りなくなってくる。
車はあるけどラリー競技があるとか、
スピードカーレースもあるとか、
あるいはぶつけて壊すというような
遊びも、あるかもしれない。
そういうところっていうのは、
あとまわしになるわけですよね。

従来のメディアの発展では、
そりゃもう、鉄道できたときも自動車できたときも
全部そうですけど、仕組みができると、
自然にソフトが追いついて来ています。
思いもかけないひとが
思いもかけないことをやってゆくのがあって、
だけど、野田マップなんか見てて
ぼくがおもしろいと思うのは、
劇場がまだできてないところでも
芝居がしたくてしょうがないひとが
集まってきているからなんです。

コンピューターを使った
メディアの発展というのにも、
まったく新しいかたちがあると思う。
我慢できない時代じゃないですか。
例えば、今ゲーム機ってたくさんあるけど、
あれだって、コンピューターが研究室みたいに
おっきいころからやりはじめたわけでしょ?

ほとんどのことが、まだ箱ができてないで、
劇場で言えば、屋根をふいていないときに
踊りだすやつがいたわけじゃないですか。
これが今回のメディアの
一番のおもしろいことだなあ、と。
ぼくは、踊り手だったものですから、
まだウェブがどうだこうだってみんなが言うし、
こういう劇場ではこういうものが来るよというときに
「知らないよ」って言うわけですよ。
だって言いたいんだもん、うたいたいんだもん、って。

今、発展しているさなかだから、
田中角栄的なもの、ブルドーザーで、
まず整地しちゃうんだ、っていうひとが
イニシアチブを取ってるけど、
実際には、さあ、整地しました、
劇場も建ちましたとなったとしても、
踊りもなければ歌もないというところに、
すぐ行くと思う。
原田 その通りで、糸井さんのほぼ日刊というのは
ひとつのいいモデルだと思うんですよ。
ウェブパブリッシングならではの。
例えば、今の大手の会社の
インターネットウェブがありますよね。
何かにつながったりします。
何か世の中に接点を持ちますよね。
デフォルトもすべておんなじ問題なんです。

「何も変わらないんじゃない?何が変わるの?
 夕刊を待つ必要がない?速い?」
そうきかれても、
速いだけじゃないだろう、と
わたしは思うんです。
マスメディアは時にうそをつくんですよ。
典型的な例が、われわれ
2年前にたたかれたわけですよ。

マイクロソフトの軍配、って。
おふくろが電話してくるわけですよ、心配して。
「あれうそだ」
と言っても、
「何で新聞が、うそ書かすと?」
って。長崎弁でね。

メディアが常にただしいという前提で
みんなが育ってきているけど、そうじゃない。
「ただしい情報を探せる」ってならないと。
やっぱり受け手の研究が足らないわけです。
今のままだとマスコミも画一化でしょ?

そうしたときに、
インターネットの社会っていうのは
ボーダレスですから、そんな画一したところで
日本のエネルギーはどこで育ってゆくの?と。
それはちょっと課題でしょうね。

(つづく)

2000-04-13-THU

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