原田 |
ウェブパブリッシングが
今までとまったく違うのは言うまでもなくて、
1にスピードですよね。
ユーザーの動きを、言ってみれば
リアルタイムで見られるわけですよ。
ひとつの本を出したとしても、
どこのページを見たか、までわかるんです。
今までのパブリッシングは垂れ流しじゃないですか。
発行部数ではかってもしょうがない、
視聴率ではかったって、知れている。
それが、ものすごいスピードで反応が返る。
例えば本なら、膨大に積まれた本が見えるでしょ?
でもインターネットは、
何十万ページビューあったって、
そういうものを感じないですよね。
あのGLAYの20万人ライブの
総数の2倍ですよって言われても
「え?」って思うわけです。
うちはそれくらい読まれてるわけです。
日本だけでもね。すごい。
相手の読者がいるという感覚は、
無形なものなだけに少ないかもしれませんが、
うまくやれば、今までにないビジネスも、
マンツーマンのマーケティングもできるわけです。 |
糸井 |
原田さんのイメージとして言った、
マンツーマンマーケティングを考えるときには、
向こうは1個1個のマンなんだけど、
送り手って、ひとりのマンであることを
表現しにくくなりますよね。
全員にしゃべりかけるわけだから、
政治家がいやでも握手するように、
「わたしである」というのを、
企業がどうつくっていけばいいのだろうか、
というところでのイメージは、ありますか?
これ、すごい難問だと思うんだけど。
「法人」という言葉はあるんですけども、
「人」になりきれないシステムがありますよね。
今のアップルの場合は、
原田さんという社長がいらっしゃったから、
ぼくらはつかみやすかったんですよ。
それでとりあえず済みますよね。
今アメリカの企業で言えば、
例えばジョブズだって言えば、
あいつだろ、という感じで「人」のイメージを
つくりやすくなりますよね。
今までは、「人」の要素があればあるほど
弱みも見えちゃうから、避けてきましたよね。
最近のコンピューターやデジタル企業は、
社長が前に出てるんで、このとおりの私です、
というのが、拡散していくじゃないですか。
このあたりを意識的にやっているのか、
それとも、アップルの出自がそうだったから
歴史と伝統のなかでひとを出すというふうに
なっているのか、そのあたりは? |
原田 |
企業がほんとに消費者の気持ちをつかむには、
どんなうまいことを言ってもだめだと思います。
お客さんに届ける商品がだめなら、
やはり最終的には・・・。
例えば「イッツァ ソニー」って、
ソニーだからいいというイメージですが、
よく考えたら、いい商品だからなの。
iMacも、商品ものすごくいい、というところで
会社もいい、というふうになってくるんです。
だからわたしたちも、
うまい広告という姿勢ではやらない。
ただ、私もそうですし
ジョブズもそうですが、
ひとが前面に出ますよね。
ユーザーの皆さんと
直接会話をしてゆくという姿勢は、
少なくともハイテクの経営者には、
共通してますね。 |
糸井 |
それはかなり意識的にやってらっしゃるんですか? |
原田 |
意識というか、文化ですね。当たり前にやってます。 |
糸井 |
アップル文化とも言えるわけですね。 |
原田 |
日本の企業の場合にも
ほとんど、社長の顔見たことないでしょ?
海外でもそうですよ。
日本の企業でも、グローバルなハイテク・・・
例えば出井さんでもそうなりますよね。 |
糸井 |
そのぶん個人としては風を直に受けているから、
きついでしょ? |
原田 |
緊張感はありますけど、感激ですよね。
アップルで何が一番やってて楽しいかっていうと、
ユーザーさんの感激する姿ですよ。
それをもう直接感じるから。 |
糸井 |
それはね、ぼく自身もそうなんだけど、
お客がいなかったら仕事やってないよ。
毎日、やなんですよ、疲れたら。
そりゃ原田さんも、
疲れたときは絶対やだと思いますよ。
だけどお客さんがいて、
そいつがこっち見て待ってると思うと・・・。
(つづく) |