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雑誌『編集会議』の連載対談
まるごと版。

1.ひさしぶりです、原田永幸さん篇。

第7回 どういう競争をするのかについて

原田 ぼくがおもしろいなあと思うのは、
日本人っていうのは、
ものづくりに強いと言いますけど、
いわゆる横並びの競争をやって、
みんながおんなじことをやって、
自分は勝ってるのか負けてるのかを、
横の競争相手を見て
安心しながら商売しているんですよ。
受験勉強でも何でもそうじゃないですか。
糸井 「あいつはこんなもんだ」って。
原田 何とかテストとかいうのを受けて、
俺は何番目だっていって頑張ったり安心したりする。
ところがそうじゃなくて、
ルールがないところにどーんと・・・。
それは横並びの競争じゃなくて、
差別化競争をやる、すごい動きが出てきたんですよ。
糸井 それ、気持ちいいって感じるひとと、
それだけは勘弁してくれ!ってひとがいるよね。
原田 21世紀のインターネット社会というのを、
いま20代30代の若いひとたちは、
体で感じていると思いますよ。
糸井 それを原田さんは平気で信じて
言えちゃうからいいんでしょうね。
普通は言えないから、
「じゃあどうやってそう言うんだ、
 体で感じてる数は数字でいくつなんだ、
 データをもってこい!」
ってなるでしょ。
原田 ぼくは、今の経営者の世代が、
あえて自分が変わるくらいの
態度を示していかなかったら、
日本は「かわいそう」なままになりますよ。
日本だけ違うぞっていうのは、
ウェブパブリッシングでは絶対にできないんです。
日本人の情報の価値観が
どんどん海外のほうに行ったら、
とんでもないことになりますよ。
糸井 原田さん自身は、実はけっこう
日本人のメンタリティーを
捨てないでやってこられたはずのひとでしょ?
原田 はい、ぼくはそうですよ。
糸井 だから、何度か壁にばーんと正面衝突して、
漫画で「壁にひとのかたちをあけて飛び込んだ」
みたいなことを、原田さん、何度かしてるでしょ?
原田 (笑)
ぼくは基本的には「日本人がんばれ」ですよ。
めちゃくちゃ「日本人がんばれ」です。
だから、日本人のいいところも
もちろんよくわかってるつもりですけど、
それでも「日本人わかれよ!」っていうのを、
すごく強く感じますね。
糸井 俺、それに近いな。
原田 でしょ? やっぱり日本で生まれ育って、
日本がだめになっちゃったら、
かわいそうですよ。
糸井 つまり、あっちのほうが進んじゃってるじゃん、
となったら、それに勝とうよっていう気分ですよね。
いいところはもう真似してもいいし。
原田 産業の歴史を見ても、
大きなところでは自動車も半導体も、
アメリカのインベンションでしょ?
ところが、ビジネスとして成立させてきたのは、
やっぱり日本じゃないですか。
品質とコストと生産性の高さで、
海外との競争に勝っていったわけですよ。
インターネットも、これはまた
アメリカでインベンションが起きている。
それを、日本が今度matureにしてゆくのか?
そこを、いままでの歴史のくりかえしで
日本の経済が発展するかといえば、それは違う。
やっぱり、知恵の勝負なんです。
糸井 今おもしろいのは、若い子が、
昔は開発したのはアメリカやヨーロッパであっても、
日本人がそれをどう応用するかということで
日本のなかでやってきましたよね。
だけど今は、アメリカのモデルと
まったくおんなじことをしようとしてるから、
開発が2重に真似になっちゃうんですよ。

・・・これ、書くかどうかわからないけど、
ビットバレーの動きって、ぼくだめなんですよ。
どうしても、あのにおいは・・・。
そこまでアメリカとおんなじにしても、
ついていけっこないと思うんですよ。
だから、あそこに参加しないチームに
ぼくは興味あるんです。

例えばポータルサイトというのも、ぼくはそれ、
「おんなじだから意味がない」と思うんですよ。
ポータルを取ろうとする限りは、
どこかで日本政府の小さいのつくるみたいになる。
政治があるのに木村拓哉が視聴率30%取りますよね。
どっちに、みんながこっちを向くかと言えば?
・・・木村拓哉のなかには、
すべてのものは入っていないですよね。
でも、こっち向かせる力は30%ある。
そうしたときに、ポータルという考えかたは、
ほんとは無力なんじゃないかと思うんです。
ぜんぶわたしのところに来なさい、
といったん言ってばらまくというのは、
ほんとは違うんじゃないの?と。

アメリカではポータルの話になりますけど、
ほぼ日刊イトイ新聞としては、
ベースキャンプになってもかまわないんだけど、
「みんな来い」っていうのは絶対無理だと思うんで。
原田 ポータルという言葉は入り口ということですけど、
そこしか入れないもの、という姿勢でやったら
ポータルサイトなんて成功しないですよ。
ユーザーさんのための、ナビゲーターですよ。
そうじゃなくて、この門をたたかないと
入れないというのがなったら、無理ですよ。

(つづく)

2000-04-23-SUN

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